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2011/06/06

MBA生がやるガチ演劇の授業

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デボラ・グリュンフェルドといえば、結構名の知られている心理学者である。
彼女がもっとも有名なのは、権力(Power)を持ったときに、人はどのような過程で腐敗するのか、という領域での研究である(参照)。組織行動論の一コースとして教えられるActing with Powerは、彼女が現役の役者数名を教室に招き、しっかりとした演劇指導を施し、最終的にPowerを持つこと/持たないことはどんなことなのかを実感する授業である。

元来、MBA生は、おそらくどの学校でも目立ちたがり屋が多く、バカ騒ぎが好きな人種。GSB Show(参照)等の劇やらミュージカルやらは、まったく勉強する気ないだろ、というレベルの練習をやらかしている。そんなこともあって、授業自体もちょっと変なノリにならないかとか思っていたのだが、面白いことに、本物の役者の前ではかなり真面目に各人が取り組む授業になった。

カリキュラムは、普通の授業に比べればかなり実践主義だ。一学期の間、5分程度のシーンを二人のペアで演じきることが、一応の目標となっている。授業中は、呼吸、ウォームアップから感情移入、小道具使いから、発音に至るまで、ここまでやってくれるのか、という感じで演技の指導を受ける。他人の演技を見ている時間がかなり長いのだが、段々と演技の水準が上がり、迫力が増す成長カーブを見られるのは楽しい。

そして、肝心の「権力」に関する部分だが、これがまた、演技だと大袈裟にやることもあり、分かりやすい。基本的に、もし相手に対して高圧的な影響力を及ぼしたい、と思うときには、相手を無視して、低くゆっくり指示するように話し、相手の行く手と会話をさえぎり、基本的に言われていることを受けた会話はしない、というのがスタイルになる。私自身に与えられた役柄は、「19世紀北欧の高圧的な市長が弟を政治的に篭絡する」、というシーン(参照の4分半以降)。授業が終わるまでは絶対に本物の例を見ないように、といわれていたのだが、少なくともYoutube上のバージョンよりは、だいぶ高圧的に、怖い人を演じる結果となった。

同じ脚本であっても、相手を基本的に見下し、何も聞き入れない、というのをやるだけで、大分雰囲気が変わるものだ。一旦こういう雰囲気に没入できると、割とうまく立ち回れる方でもあるので、脚本を丸覚えしてからは、色々と楽しかった。そして同時に、案外皆が、「真面目にやれ」といわれるとうまくできない、という、結構シャイな側面が見られたのが面白かった。

演劇をしながら感じ、また教わったことは、コミュニケーションは常に明確に、ということだ。良い演技にはそれを構成する必須要素がいくつかあり、その最たるものは「ある場面において、演者は何を伝えたいのかが明確である」ということである。演劇であれば、一つのポーズ、一つ一つの言葉の裏に、どんな意図があるのか、ということにかなり時間をかけて練られている。実生活でも、相手が自分に対して理解がないこと、というのを前提としてみると、一件大袈裟に見えるプレゼンが計算されたものであるんだな、と思えることが、それ以来何度か起きている。

また、もう一つ大事だと思った学びは、人には色んな意味でエクスキュースが大事だ、ということ。演劇をしながらわかるのは、大人数を前に演技をするほうが、二人きりで練習をするよりも、没入がやりやすくなる、ということである。演技、というマインドセットに自分を置くことは、自分が不慣れなことをやりやすくすることでもある。自分の日ごろの慣習から切り離される、ということ自体が、よくある演劇をやる者の快感の源泉でもあるのだろう。少なくとも、自分にはそのように感じた。

ガチ演劇、というタイトルの通り、この授業を通じて得たものといえば、ガチ演技とは何か、という教訓である。ただ、よく考えると、演技、とまでは行かなくても、誰しも皆、人の期待に対してある程度の人格を被って生きているもの。心理学を学ぶには、かなり効率的なメソッドなのかも、と感じると共に、ちゃんとした演技のできる役者って、深い職業なんだなあ、と思った。


2011/03/10

TALK

このほど、TALKと呼ばれる名物イベントで喋ってきた。

このGSBイベント、毎週一人/二人の学生が40-50分程度、自らの過去や未来図を語るというもの。1年生が喋るイベントでは、独身寮の集会部屋がすし詰めになる形で行われる。2年生の場合は、少し離れた学生のシェアハウスに40-50人が集まって、もう少し余裕がある空間で話を聞く形を取る。昨日は、期末のテスト/レポート期間だというのに、同じくらいの学生数が来てくれた。感謝感激である。

基本的にこのイベントで話されることはプライベートそのものだ。暴れた内容だったり、悲しい話であったり、延々とコメディ・ショーのような話を展開する人もいるし、とにかく多様である。僕はこういうセッティングで話をするときに、割とくだけた形で、とにかくウケを狙いでやることが多い。ただ、今回はしっかりと重い話をしたかったので、その構成は取らなかった。そのため、うまく伝わるものかどうか、かなり緊張していた。

そして本番。
ネタ重視のオープニングを使いつつも、その後は、ピシャリと静まり返るくらいに重い話をした。その間、爆笑と共に、息を呑むような静けさの観衆とのやりとりがあった。何かを大人数を相手に喋ること自体、それなりの満足があるというものだが、それ以上にコミュニティと一体化する何かを感じた。こっちの人の爆笑は、本当に気持ちがいい(別に日本の場合もそうなのだけど、何というか移入度が違う)。同時に、悲嘆にくれたリアクションの中にも、明確なサポートが感じられる。そんな暖かさに励まされながら、中々オープンにはしないことを知ってもらった、というプロセス自体に輝かしい感情を覚える。1.5年前には想像だにしなかった、その場で感情のバランスからウケまでを考えて喋る、というベタな英語力の向上に、我ながら人は変わるものなのだと思った次第。あっという間に40分の時間が終わり、拍手の中で長友よろしくお辞儀をした。

このように、お互いを暖かく包む文化に触れるにつけ、GSBというすばらしいコミュニティに身を置くことができてよかったと感じる。こっちに来て2年目にもなると、数あるイベントの中でも、個々人の資質やメッセージが分かる人イベントを重視するようになるが、多少のお世辞はあったにせよ、「信じられないくらい良かった」、みたいなフィードバックをもらう中で、コミュニティからもらった沢山の贈り物のうち、少しだけ還元することができたような気がした。

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2011/01/11

冬学期の履修状況

冬学期が1月3日に始まり、下記の履修スケジュールを確定。

①コーチング/メンタリング        月・金 10:00-11:45
②ハイ・パフォーマンス・リーダーシップ 月・金  13:15‐15:00
③債券市場(Duffie)                 月・金  15:15‐17:00

④行動ファイナンス             火・木  10:00-11:30
⑤中国語会話                    火・木  13:15-14:05
⑥技術的変化と主権(Peter Thiel)    火・木  14:15-15:45 
⑦インフラと破壊的テクノロジー      火    19:00‐20:15
⑧現代の企業法務              木   16:15-18:15

なかなかヘビーです。

①コーチングでは隔週ベースで3人の一年生とのセッションが、②の通称HPLでも毎週2.5時間の相互学習セッションがある。①と②を通じて、前学期のTouchy Feelyで得た経験をベースにより実践的なトレーニングを行い、よりプロフェッショナルに近い環境下での影響力を磨く位置づけ。

個人的な楽しみは何と言っても⑥。ペイパルマフィア(参照)のドンとして君臨するピーター・シールが、なぜか(笑)国家についてロー・スクールの教鞭を取る主権論である。ヘッジファンドを運用しつつ、Facebookを始めとする数々の著名企業のシード投資家でもある彼は、思想面では弩の付くリバタリアン。自由至上主義に基づく海洋コロニーに投資したりと、投資の世界でも思想の世界でも暴れ放題である。
彼は、インターネットや新興国の隆盛を通じて、経済や個人の活動が過去とは全く異なるスピードで変化する中、既存の国家の枠組みでは、インフラ供給や制度変化が疎かになることを予見している。授業のリーディングで課されているのも、SF本と経済/哲学の古典のミックス。授業を通じて、彼が意外と常識的でありながら、どのポイントで攻撃を仕掛けようとしているのか、見極めていきたい。

加えて、⑧も密かな楽しみ。元SEC委員のグランドフェスト教授(ロースクール)が、企業にとっての法務の位置づけを再考するというもの。エンロン、タイコ、エクソンモービルといった、法務やコンプライアンスに関する象徴的な事件の当事者を呼んで、好き放題質問をして良いという授業。

これに加えて、③、④のような定番のファイナンスの授業で、どれだけしっかりと勉強をしておけるか、が今学期の課題ですね。

2010/11/06

Googleの文化と自動走行車の意図

GSB卒業生のGoogle社員が会社文化の説明(&リクルーティング)に来た。
割とよく紹介されていることだが簡便に10ポイントにまとめてくれているので、とりあえず英語ベタうちメモ。

1. Spend time on hiring: expect someone who come in to teach us

2. Ideas come from everywhere. Don't be (Hippo: highest paid person without opinion) who kill ideas

3. Share everything you can. Eric discloses everything reported to Board of Directors to all employees (except financial numbers).

4. Implement system to generate and manage ideas. You can't just have them but need to do something with ideas

5. Respect user numbers than money

6. Data drives all decisions

7. Launch and iterate

8. Vision: I cannot force innovation, but can create space for creativity

9. Thinking big: Thinking beyond, what can we today looking back from 2020

10. Bet on a trend than fall on a victim.


面白かったのがグーグルカーの話。最近、ハイウェイ280を自動走行するグーグルカーがこちらでは話題だが、そのアーキテクトの話いわく、それを作ったきっかけは
「全米で車両が道路に占める割合は6-8%。これを14%くらいに高められたら、道路の価値が2倍になるんじゃないか」
というところにあるとのこと。さらに、
「ビジョンとは、なにかフラストレーションがあって、それを解決できそうなところに生まれる」
とのことで、確かに自動走行車はそのテーマには合致している。ちなみに、これでお金儲かると思いますか、という質問は、まあ、別に何とかなるさ、という感じでした。

2010/11/04

Bump創業者のお話

ダウンロード数2000万超を誇るiPhoneアプリ、Bumpの創業者の話を聞いてきた。



日本でも利用可能なこのアプリの機能は単純で、同アプリを起動した状態でスマートフォン同士を握り締め、げんこつを(軽く)ぶつけ合うと、お互いのコンタクト先や写真を共有できるというもの。

私も昨年iPhoneを購入後、友人にBumpしようぜ、と言われて、最初は何が何だかわからなかったのだが、今では必須ツールの一つ。日本のガラケーにおける赤外線通信に、若干のソーシャル要素がくっついたもの、という印象。個人的に、衝撃を感知するセンサーと電波の基地局やGPS情報、クラウドでの情報処理という、ローテクとハイテクの組み合わせでできたこのアプリには、日本的な工夫を感じて親しみを感じていたので、話を聞くのを楽しみにしていた。

創業者は、シカゴ大MBAプログラムの中退組。いわく、入学したてのころ、お互いのコンタクト情報をカチカチ手入力する手間を見て、何とかできないものかと悩んでいたそうな。ブレストの過程では、電話同士をシェイクする方法や、お互いの画面の写真を取る方法等、色々考えていた。そしてある日、会計の授業の途中で、「ぶつければいいじゃん」とひらめいたのだと。このアイデアのすばらしさは本人曰く

「酔っ払ったアホ(Drunken idiot)でも理解できる」

という点にあり(※1)、この発想に心酔して、テキサスインスツルメンツ時代の同僚らと共に3ヶ月でベータ版をローンチした。その間のコストは3000ドルだった。

ローンチ直後、シカゴ・トリビューン紙のライターのブログでレビューを書いてもらうことに成功した。そのブログの情報をすぐさま自分でリツイートし、所謂【拡散希望】をそのまま地でやったとのこと。ローンチ後の週末の間に、これで150万DLを達成した。
その後、今や時代の寵児であるYコンビネーターに弟子入り。創業者曰く、これこそが自分たちの意思決定のでの最も大事なアクションだったとのこと。アプリの改良を進めつつ、セコイアから3ミリオンの出資を受けて、陣容も15人まで拡大。途中、アップルのCMでもBumpを使うシーンが取り上げられたことから、一気に知名度は高まり、現在でも毎日7万ダウンロードを記録中。

衝撃的だったのは、ここまで至るまで、ほとんど宣伝を口コミやBuzz頼みにしており、彼らが今までに累計でかけた広告費用は45ドルだけ(Youtubeに乗せるためのビデオテープと、撮影用の黒い布代)だったとのこと。今や、それでデファクトになるのだから面白い。


彼の話を聞いていると、典型的なテック系スタートアップのカラーが見えてくる。
「我々はMBAの人は雇う気はありません」
(じゃあ、そういうお前はどうなんだ、という質問に大して)「だって、創業者3人のうち二人はシカゴMBA中退だから、まあ足してMBA一人分でしょ。テック系スタートアップにコード書かないMBAなんて一人いりゃ十分。」
(マネタイズの方法について)「セコイアが出資してるんだから、彼らも何とかできると思ってるんじゃないかな」

結果、GSBにおいて良く聞く「じゃ、手に職のない俺たちはどうすりゃいいんだろう」という溜め息を沢山聞くことになった。まあ、MBA批判の強いYコンビネータ(参照:松原さんの記事)の有力企業と接すれば、必然的に感ずるであろうことでもあるのだが。

なお、マネタイズについては、講演中はあまり触れられなかったが、既にBumpの機能を用いたAPIを使ってペイパル等とのコラボレーションを行っている(参照)。ペイパル+Bumpというのは、実は私が3月ころ、友達とのプロジェクトでまさにウキウキして進めていた発想(参照)。KPCBの援助を受けている教授までノリノリだったので、そのまま進めていたら、ひょっとしたら今頃火の車になっていたかもしれない。
そのことについて詳しく聞くと、なんとペイパルはBumpがローンチされた2週間後に既にアプローチをしていたとのこと。やはり、技術を見ている人はいるんだし、生兵法というのは怖い、と思った。ローンチ2週後といったら、私はまだMBA受験のエッセイを書いているころだったわけだし。


※1 なお、アホのレベル、という例で用いられていたのが以下;
先日、電話がかかってきて、ブラックベリーでBumpが使えない、という内容だった。ブラックベリー用にはアプリは供給してないんです、と答えると『だから、ブラックベリーでBumpのウェブサイトを表示してるんだよ、何で使えないの?』と怒られたのだと。

2010/06/09

一年目が終わって

一年目が終わった。

激動といえば激動だったし、あっけないといえばあっけない、という感じだったが、とにかく一年乗り切った、という感傷はある。

新しいことを何か覚えたか、といえば、正直なところ、「物事の考え方」というレベルでは頭をハンマーで殴られるような経験はそれほどはなかった。基本的に、学部時代に積み重ねた物事の見方、というのは変わらないし、もっと長く言えば、高校の頃から持っていた世界観は、さほど変わっていない気がしている。

しかし、マジになる、という点ではこれ以上ないくらいにショックを受け続けた9ヶ月だった。自分が日本企業のサラリーマンである、ということが、いかに色々なことを知ることができない/知らずに済む、という立場だったことかは、毎日、学校に行くたびに感じさせられた。生きることの機会コストは非常に大きく、世の中はその問題から目を背けさせる装置で溢れている。この問題に、最初から正面切って立ち向かっている同級生もいれば、自分は自分と割り切ってキャリアを決めている人、どちらのバランスも保とうとしている人等、スタンスの面でもDiversityが見られている。そのこと自体が貴重だ。自分はどのタイプになりたいのか、自分は運命をどんなルールで縛りたいのか、本当に悩んだ。まだ答えは出そうにないけれど、少なくともベンチマークとフレームワークを得ることはできたと思う。来年度は、その実験の年である。



さて、顧客満足度的なGSBの評価をここでしておきたい。Leadership Labsのスタイル同じく、必ず長所と改善点を述べる形で。

プラス(良かった点)
世界のリーダーといえる若者を集めている点、これに尽きる。日本でキャリア・ゴールとして思いつくようなことを、易々と達成してしまう人が溢れている。勿論、スーパースターばかりではなく、様々な学生がいるけれど、たった9ヶ月のInteractionを通じて、殆どの人が変わる過程、というのを見ることができた。世界を変えるために、どうやって自分が変わるのか。この、避けられない問いを考える心理的コストをGSBは徹底的に下げてくれる場所である。
・学生中心の授業スタイル:3年前のカリキュラム変更以来、GSBは大分アカデミック中心になった、との批判がある。その側面はあるかもしれないものの、多くの授業において本当に良かったと思えるのは、時として教授よりも経験・発想で勝る学生が遠慮なく意見を述べられる、というスタイルである。これはある程度、どのMBAプログラムでも行われているものだが、成績非開示ルールの下、自分のレピュテーションを下げてまで点を取ろうとする傾向は少ないので、学生集団を感心させてやろう、と選りすぐりのネタを発言で出すインセンティブが生まれやすいのだと思う。一年間、多めに応用コースを、些か無理しつつも取ったことで、そういうやる気のある学生が多いクラスを最大限経験できたことは非常に良かった。
ソフトスキルの習熟こそ、自分のGSB体験の中心にあることを実感している。Leadership Labsに加えて、冬学期・春学期とコーチングを2年生に受けたこと、チームワークにおける対立、対人関係におけるアクションの大切さ等、このリスクフリーの環境だからこそ学べたことは本当に大きい。自己理解ができていると思っている人ほど、それは出来ていない、という問いを考え続けた9ヶ月だった。2年生の優先履修科目も、Touchy Feelyやコーチング等、他人に対して、どうやったら善きリーダーとなれるかについて、徹底的に自分を試す予定である。
・GSBというよりも、シリコンバレーという立地ゆえのことではあるが、年が明けた頃から、他学部・学外の日本人の方と多く知り合うように努めてきた。ここは、日本の経済システムに対する、一つの強烈なアンチテーゼを提示し続ける場所であり、ある意味外国人以上に日本を強烈に批判しつつも、心の隅で拠り所として考える人に溢れている。ロンドンで小学校時代を過ごした自分も、多少ならずともそういった心を持っていたと考えていたが、精神論ではなく、実際に何を変える必要があるのか、犠牲となるものは何か、本気で考え続ける精神的な土壌となっている。スタンフォード日本人会で共同で代表を務めることもあり、向こう一年間、この機会を大切にして、考えていきたい。

デルタ(改善点)
若くて独身中心の文化であり、遊びすぎる傾向はあるのかもしれない。既婚者同士での付き合いはかなり増えたけれど、一部の独身者グループは完全にParty School状態。まあ、インセンティブ理論のいい勉強になっている気がするけれど、Distractingだとも感じる。こればかりはしょうがないか。
学生が優秀すぎて、勉強をナメていることも多い。ランダムで与えられた質問に対する思考能力や、受け答えの上手さ、という点では優秀な部類の学生の頭脳は、教授のそれを上回っていることがしばしばある。教授自身にとって、それは本当に恐ろしいことなのかもしれないが、そこを容赦なく「こっちは学費払ってるんだ」という立場で追い詰める学生の多いこと多いこと。学生の傾向として、やはり難しい理論を読むよりも、分かりやすく新しい実例を求める傾向があるので、理論好きとしては、これまたDistractされることがしばしば。悔しいが、HBSのクリステンセン教授といった、この分野ならこの人、という教授が多いわけではないことは、シリコンバレーという環境の代償ともいえるのかもしれない。ウィリアム・シャープや、ポール・ミルグロムも、近くにいるだけで、教えてはいないし。
・(GSBというよりは自分への評価だが)時間管理といった面では、ほとんど失敗続きの一年だった。3時間で終わると思った課題は8時間かかる、ということを身に染みて感じた。MBAの1年生というのは大抵そういうものだ、といわれるけれど、その通りになってしまった。来期は、できるだけ2時以降に寝る日を減らしたい。


とはいえ、完全に皆様のお陰で何とかここまで来れました。
本当に、ありがとうございました。

更新頻度も大分落ちた形で恐縮ですが、秋以降もまた、よろしくお願いします。

2010/01/08

冬学期始まる

1月4日から授業は開始。GSB一年生は基本的に一年間、割と固定されたコースワークをこなすため、内容の毛色はさほど変わらないが、クラスがリシャッフルされた状態で始まるので、割と新鮮な思いで学校に通っている。履修している科目は以下。

・組織の経済学
・Eコマース
・マーケティングと競争環境
・会計学
・確率データと意思決定

これらは全て、基礎的な授業の初級・中級・応用のいずれかとして位置付けられているのだが、組織の経済学(ミクロ経済学の応用コースに相当、英語名はEconomics of Organization)の履修内容には驚かされている。(以下、経済学用語に溢れている点ご容赦下さい)

始まる前は、ミクロ経済学の応用コースであれば、不完全競争のおさらいをやって、契約理論の枠組みを使って雇用体系とかの良し悪しを考えたり、産業組織論のネタとかを扱うのだと思っていた。しかし、全然レベルが違った。
授業の初回から、不均一な財の取引メカニズムの質をどうやって判定するのか、という課題が課されて、皆あーでもないこーでもないと、「絶対に完全な解がない」問題に対して右往左往。二回目の授業(同じ週の木曜)の課題では、同じ会社の中でエンジニアを貸し出すマーケットの取引メカニズム(貸し手と借り手の情報の非対称性等、意地悪な前提が複数ある)を考えて、その欠点と共にプレゼンせよ、といった課題が出ていて、何だか経済学の修士課程に飛び入り参加してしまったような感慨に包まれている。正直なところ、今までの二回のぺースがこのままの2年間続けば、(ちゃんと付いていければ)メカニズム・デザインのPh.Dが取れてしまうんではないかと思ってしまうくらい。
教授は、ロバート・オーマン(参照)のイスラエルでの弟子で、これぞゲーム理論学者、という感じの人である(ちょっとクレージーな感じも)。学生時代に組織の経済学をバイブルにしていたので、元々楽しみにしていた授業ではあったが、予想外のレベルで好奇心をそそられている。

他の授業も、それなりにシビアな内容。Eコマースとかは、Salesforce.comからLinden labまで、ありとあらゆるシリコンバレー的企業のケースを網羅して、その競争優位をエクセルワークを通じて知るというもの。マーケティング(初級)は、企業経営モデルを動かして互いのチーム同志で競うというもの。会計学(応用)では、初回の授業でITバブル期のアナリスト不正が暴かれる過程を扱い、主要な「会計操作の素」を知るような構成になっている。
まだ始まって3日だが、秋学期の授業の多くがCEOとしての目線を鍛える内容であったのに対し、冬・春学期は「CFO、CIO、COO、マーケティング等の部門長、エンジェル投資家等の目線」を鍛えるパートになるのかもなあ、と今のところ感じている。結構ワークロードも重い(とりわけ、チームでやる課題が増えた)中で、今後どうなることやら。

2009/11/25

ワシントンでの修学旅行


サンクスギビングの週の月・火曜を利用して、学校のパブリック・マネジメント・プログラム(公共政策やNPO経営等が中心)の修学旅行に参加してきた。2年生向けの一行に、1年生十名余が抽選で加わる形式であり、運よく参加することができた。ミーティング相手は以下の通り;

1.国家経済会議の元ディレクター
2.エネルギー省の局長およびCFO
3.ケビン・ワルシュFRB理事
4.ビル・メリンダ財団の水質管理プログラム責任者
5.アショカ財団の創設者とディレクター
6.経済諮問委員会のシニア・エコノミスト
7.ハーブ・アリソン元TARP監督財務次官補(元FNMAのCEO)
8.メディケア・メディケイド研究所の実験プログラムディレクター
9.ゼーリック世界銀行総裁

実は、ワルシュ理事の枠は、当初バーナンキ理事長が予定されていたが、議会での公聴会が入りやむなく変更となっていた。一番の目玉が変更ではあったものの、「公共政策の専門課程にあるわけではない」学生が「入門的に事情を聞きに行く」相手としては、豪華すぎる、の一言に尽きる。

個人的な収穫としては、今までほとんど触れたことがなかったNPOに関する話を聞けたことが大きかった。ゲイツ財団とアショカ財団といえば、片や世界最大の慈善団体、片や世界で最も有名なソーシャル・ベンチャー・ファンドである。ゲイツ財団の方(GSB卒業生)は、なぜそのようなキャリアを続けているのか、といった話を個人的なレベルで掘り下げて聞くことができ、単なる関心だけでなく、モチベーションや、一筋縄ではいかない難しい問題に挑むことの大切さを教えて頂いた。他方、アショカ財団の創設者の話は、不躾な感想ではあるがEntertainingではなかった。ソーシャル・「ベンチャー」であることの大切さを、何度も繰り返し聞く中で、成功する「新しい概念
の組織を作るためには、愚直なプリンシプルを宗教家のように説く人が必要なことを実感。

多くの人が良かったと述べたのは、ハーブ・アリソン元TARP監督者(こちらもGSB卒業生)である。TARPは、金融危機の中でも国民的議論となり、政府の範囲・役割の曖昧さの境界線にあった存在である。
少し意地悪に、投資銀行の未来や、金融イノベーションが生まれる余地について質問してみたが、
「金融イノベーションはもう投資銀行に頼る時代じゃないし、今後はヘッジファンドや独立系の業者が中心になるだろう。金融産業でキャリアを歩みたいなら、自分の
強みが『珍しい』エッジにあることを大事にするべきだ。自分はメリルリンチのパリや東欧オフィス代表に一人で立候補した歌舞伎者だったけれど、それが、リーダーシップ能力の基礎になったのだと思う。人生は一回しかないし、ユニークな機会を求めるべきで、間違っても2000人のバンカーの中で競争するようなレースに自分を突っ込んではいけない」
と、「有名人」としてではなく、「学校の先輩」として真っ直ぐなアドバイスが回答として返ってきた。これまでも繰り返し、米国人の独特のコミュニティ意識を感じることはあったけれども、それが世代間でも生きていることを実感する一瞬だった。

その他にも、エネルギー省では、元々オバマ大統領のイリノイ上院選時に真横でアシスタントをしていたGSB卒業生が30歳前後で再生エネルギーのマーケティング戦略部長として政治任用されていたり、景気刺激策の政策公募担当局長がPEファンド出身だったり、元ロケット・サイエンティストがCFOとして予算の切り盛りをしていたり、、、想像以上に、この国における中央官僚の姿がリーダーシップ能力主導であることに気付かされた。また、公務員の人たちのモチベーションをどうやって上げているのか、といった点を随時聞き、その場で思った疑問をぶつけられる機会となったのが、本当に貴重だった。

修学旅行中のミーティングは、政府やNPOといった普通のロジックが通用しない領域での話であったこともあり、教科書的なビジネススクールの授業内容とは異なる、数か月ぶりに「仕事脳」を使うものであった。ミーティングの合間の話も自然と公共政策の話になったり、日本の政権交代の分析を求められたりと、普段のクラスメートと違うモードで話す機会にもなった。抽選に漏れてしまった多くのクラスメートにもいずれ還元できるように、今回学んで、考えたことをフィードバックしていきたいと思う。

2009/11/14

Week 7終了

今週はちょっと体調がすぐれず、やや低調な感じで毎晩午前にならないうちに寝ていた。

1.CATの授業が終了

一年生にとっては、これぞ鬼門、といえたクリティカルシンキングの授業が終了。毎週水曜9時に向けた課題の悪夢が去り、それぞれの方法でその終焉をお祝いしていた。わが家は寿司パーティから残っていた獺祭でお祝い。獺祭はこちらの日系スーパーとかでも結構置いているのだけど、こっちの人や、日系人の口にも合うのだろうか。


2.他の外国学生との交流
イスラエルとベトナムから来た一年生と、一時間ほどバックグラウンドや政治観について話し合った。一人は、前職が政治畑のアナリスト、ハーバード大KSGとのジョイントプログラムに所属していて、昨年はジャパントレックで鳩山・麻生の二人とのセッションがあったらしい。もう一人はデンマークの会社で働いていたことがあって、基本年6週間の休暇、家族も含めた医療費が無料、最高税率が85%の上司、といった面白い話を聞くことができた。
先週のグローバル経営論のジャパンセッションでももっとも関心が高かった少子化問題と広義の規制緩和、という二大トピックが、日本を語る上ですごく大事なのに、学術的議論にはかなり偏りがあることを改めて意識する。少子化対策を個人的に説明する時には; 1)若年人口が子どもを持たない選択をする理由の多くは経済的なものとも説明できるはず。昔に比べて、所得の安定性が下がっている(という期待があること)ので、余裕がない。 2)結婚年齢自体も上昇していて、過去の結婚に対する期待感が強いイナーシャとして残っていることが、晩婚化を特に都市部で促進している。 3)いったん結婚した人の出生率はさほど下がっていない。よって、ダイレクトな施策として、婚活とかお見合いが官民双方の話題だったりする。 1)と3)の間には矛盾があるのだけど、3)を見越してあまり結婚をしないのでは、と理解している。本当は経済環境が改善しないとこの辺も回らないのだけど、基本的に一時間とかだと、この辺で話は終わってしまうことが多い。 あとは、民主党政権になって、日本は変わったのか、という質問も多い。外交問題について問われることも。あんまりいい加減なことを言わないようにしつつも、そこそこBuy Japanのストーリーを求められているような、不思議なプレッシャーを感じることもある。

3.グローバル経営論の課題に時間を奪われる
当該授業の課題、6人グループでの共同責任作業となっているのだけど、途上国に米国企業が進出する際にどのような点が課題になるのか、を具体的な例をもって分析している。個人的にやる分にはいいのだけど、残り5人との共同プロジェクトである分、議論にも貢献して、情報量でも貢献して、担当執筆分については足を引っ張らないように、と気を遣うのも事実。大手コンサルやらCIA出身者に対して、情報の使い方でやり合うのも結構疲れるが、これも醍醐味というもの。

4.日本食の開拓

豚骨ラーメンとか



居酒屋とか


を開拓した。前者はごち、というクパチーノの居酒屋、後者はサンノゼのミツワ近辺にある晴ラーメン。サンノゼも含めて、どれくらいのレベルの日本食があるのかがだんだん分かってきた。


来週が終わったら、サンクスギビングで一週間の休暇がある。同週、前半は学校の修学旅行プログラムでワシントンの機関や有名人を訪問したのち、後半は友人に同市を案内してもらう予定。

2009/10/25

典型的な一週間 (EAP中)

GSBの生活は、基本的に月火木金に授業が集中している。EAP期間中の自分の時間割は以下の通り。

月 1000-1130 グローバル経営論
  1330-1500 組織行動論
  1515-1700 企業戦略

火  800- 945 ファイナンス

水  830-1130 リーダーシップトレーニング

木 1000-1130 グローバル経営論
  1330-1500 組織行動論
  1515-1700 企業戦略

金  800- 945 ファイナンス
  1330-1500 クリティカルシンキング


これらの授業には一コマ最低でも2時間は確保したいところ。2時間では、ケースをざっと読み込んで、そこそこの論点を考えるのが自分の限界。ケースとは別に30-40ページくらいの読み物が付随していることが多く、これらは本当に流し読みになっているのが正直勿体無いところ。授業によっては、事前に指定されたチームでどんな戦略を提案するのかの検討を要求する例もけっこうある。
加えて、クリティカルシンキングの授業において、毎週水曜21時締め切りのペーパーがあり、読書やDVDでの情報インプットと作成、ライティングコーチの査読に出すプロセスも含めて、個人的にはのべ10時間くらいを費やしている。
上記を合計すると、一週間だと準備・課題作成に最低28時間は確保する必要がある。平日だけで換算すると一日(集中した)6時間弱。付加的なリーディングに10時間くらいそれとは別に割くため、平均的な就寝時間は3時過ぎくらい。結構勉強しているなあ、という実感はある。
惜しむらくは、すでに「情報量のオーバーキャパシティ」を実感してしまっていること。すでに理解ができていることだったら良いのだけど、中々授業の復習に割く時間が確保できない。ほとんどの日において、時間的余裕がないために、家に帰ったらすぐに次の日までに必要な課題のリストアップを始めてしまう癖がついてしまった。そうすると、その日のケースを通じて考えたり、浮上した疑問については正直手放しになってしまう。なんとかしたいところ。

2009/10/24

Week 5 終了

今週はいつにも増して大変な一週間だった。中間試験前に、中間課題なるものが3件課されており、普通のワークロードに更に嵩増しした感じ。来週は試験なので、週末も一応勉強ということになっている。

0.EAPについて

本ブログで触れてこなかったが、現在GSBの一年生はEAP(Exclusive Academic Period)と呼ばれる「学業専念期間」にあり、これが中間試験が終わる来週まで継続している。この期間が2年間の間では一番大変だとか、就活しないで済むからまだいいとか、そんな意見がちらほら。原則的にクラブ活動(ビジネススクールには職業系クラブ(金融、コンサル、マーケティング等)、体育系クラブ(サッカー、アメフト等)、その他(愛犬、ワイン等)がある)も禁止されている。これが来週から一斉解禁になる予定。

1.課題の山
グローバル経営論、戦略論、リーダーシップトレーニング(後述)の課題がそれぞれあり、平均して5-6時間くらい消耗。これに加えていつもですら読みきれてないコースリーダー(読書)があったので、今週は授業が消化不良も良いとこだった。消化よりも、もはやコールドコールを巧く避けるか、何とかやり過ごすかというゲームになってしまった。
課題については、英語を書くスピードはそれなりに上がってきた気もするが、やっぱり元々何を書くかに時間を消耗する度合いは変わらない。クリティカルシンキングの授業を通じて、少しずつこっちの人に受ける思考方法や、テクニックを学ぶことはできている気がするが、中々ブレークスルーとか、そういった物がある分野ではないので着々と、とにかく書いた枚数や貰った点数の累計とかで、自己満足を覚えていこうと思う。

2.友人の誕生パーティに飛び入り参加
こんなに忙しい週だというのに、友人は誕生パーティを開催。たいしたものだ。アイスが好きらしくアイスパーティなるものだったが、家にあった調理用の日本酒を持参して、少し飲ませて帰ってきた。

3.チームからのフィードバック
リーダーシップトレーニングの授業では、以前書いたチームのメンバーから、綿密に「どのようにコミュニケーションスキルを磨くべきか」という批評を半期ごとに受け取ることになっている。今週はこれがあり、7人のチームメートにそれぞれ30分~1時間のフィードバックを記入した。提出時間が過ぎると、逆に自分へのコメントが閲覧できるようになる。
フィードバックでは、必ず長所と短所をセットで書くようにできているので、改善点についても本当に忌憚のない状況で反省点が示される。まだ一読した限りだが、これが本当に有益なものだった。ビジネススクールというRisk Free Environmentの中で、レベルの高い学生の綿密なやり取りから生まれるラーニングは貴重なものになった。こういったフィードバックをもらえることが、ウェブベースのMBAプログラムとは異なる点だし、フレンドリーな学校ならではの醍醐味なのだろう。

4.ファイナンスの授業はちょっと楽
やっぱりこれは少し楽をしてしまっている。MM定理とかをゆっくり解説してもらいながら、色んなことに想像を膨らませられるのは結構豪華な時間。
ファイナンスの授業は、一応最上級のクラスに入れて貰っているのだが、経験者は皆ちょっと退屈しているような感じ。パソコンを原則持ち込んでエクセルをいじる授業(必須ではないが)なので、何人かの学生がデイトレに勤しんだりしている。ただ授業そのものも楽しいので、頭の体操には良い感じ。朝から8時の授業なので、まあ、しょうがないのかも。。。

2009/10/23

ロシア著名投資家の講演

中間試験前で慌しいGSBの毎日。そんな中、ロシアで投資活動を行う卒業生ビル・ブラウダー氏の講演があった。ここ2年ほどで聞いた中では、一番エキゾチックな内容の講演だった。




同氏はロシアで13年前よりエルミタージュ・キャピタルという運用会社を創立している。ロシアでもっとも有名な「アクティビスト投資家」であるそうな。ただ、そこにいたるまでのキャリアも非常に面白い。以下だらだらと箇条書き。


・祖父はカンザス州出身。祖父は牧場を経営していたが、売却することになり近くの工場に勤務。工場内の組合活動で頭角を現し、次々に大きい組合へと転進。組合活動が嵩じて、最終的にニューヨークで「米国共産党書記長」となる。その後、ロシアに移動し、祖母と出会い結婚。米国に戻る。
・そんな祖父を持つビルは(共産党一家に対する)反抗期になってスタンフォードGSBに進学。しかし、就職する前になって自分の競争優位は祖父だ、と気づく。東欧でのビジネスを2年生だった1989年に模索。そんな人は当時全くいなかった。
・ボストンコンサルティングのロンドン支局に変わったマネージャーがおり、「東欧ビジネスが立ち上がった際には君が責任者になれ」というお触れで採用。さっそく、東欧でのコンサル仕事を探し始める。
・当時、ちょうどポーランドのバス会社が世界銀行がらみでコンサルを探していた。仕事自体はリストラ絡みのつらいものだったが、現地の新聞を眺めながらポーランドでは民営化が進展していて、株式の公募が行われていることを知る。財務諸表を見てみると、どう計算しても「株式の公募価格が前年一株利益の半額」という水準になっており、とりあえず全財産の4000ドルを同株式につっこんで見た。
・1年後、株価は10倍に。10倍に増えるのを見ると、身体に変な薬物が流れるのを感じた。東欧はとんでもない場所なのではないかと思い、ビジネスをしなければ、と確信。
・ソロモン・ブラザーズに移籍。入社当日、「給料の5倍稼がなかったらクビ」と宣告される。で、とにかくポーランドやハンガリーの民営化案件を回ってみるが、全くサークルに入れてもらえない。しょうがない、と思っていた中、ロシア市場にもたまたま目を向ける。当時ソロモンはおろか、ウォール街の人間は誰もロシアで投資銀行業務をやっていなかった。東欧担当だったので、勝手にロシア担当も襲名。
・ロシアで、漁業権の買収に関する助言案件をゲット。20億ドル相当の船舶を、250万ドルで買うべきか、という助言であり、おそろしく簡単であると共に、例の薬物が流れるのを再度感じる。
・こんなに美味しい話があるわけがないと、モスクワで情報収集を実施。すると、今度は国民に国営企業の民営化バウチャーが配られていることを知る。その額が、全国有企業の30%の株式で100億ドル。安すぎると感じ、ソロモン内で騒ぎ始めたが、当時は「お前どうかしてる」という態度で相手にされなかった。
・当時の超上級幹部からこの件でプレゼンを頼まれる。熱心にプレゼンをするも、彼は興味がなさそうにしており、全く相槌を打つことなく、20分ほどしたら部屋を出て行ってしまった。途方にくれていると、十分後に戻ってきた。「こんなにすごい話は聞いたことがない。リスク管理部に今2500万ドル投資するよう言ってきた」。
・投資を行ってみたところ。7ヶ月でポートフォリオが5倍に。
・1億ドル稼いだ男としてエコノミストに紹介される。同時にソロモン内で一躍引っ張りダコに。社内にロシア・タスクフォース委員会が設置されるも、どう見てもパートナーが自分の手柄の横取りをしているようにしか見えなかった。退社し、1996年、自分でエルミタージュ・キャピタルを創業。
・とある大型プライベートバンクから2500万ドルの運用資金を獲得。投資先として、石油企業に目を付けた。当時。クレディスイスがアナリストレポートを発行している会社は、ほとんど差がない同業他社の10倍の株価がついていた。よって、カバーされていない銘柄を独自に調査をし、投資。
・最初の一ヶ月で35%、二ヶ月目に40%のリターンを記録。プライベートバンクの顧客から運用資金が殺到し、一気に元本が1億ドルに。その後、18ヶ月で800%のリターンを記録した。
・30代前半、800%、楽しい毎日、ヨット生活のススメ。これらは、全部「売り」のシグナルだったのだけど、全部見過ごしてしまった。
・ロシア危機が発生。10億ドルの運用資産は一気に1億ドルに。資産が減る中で、投資先企業からロシアの不正勢力に資産を強奪されていたことに気づく。
・情報を集めると22人の重要人物が、ありとあらゆる形で、国有企業等から原油等の権益を奪っていた。
・当時、ガスプロムはエクソンモービルに比べて0.3%の株価しかついていなかった。その理由は権益が強奪されていると思われていたから。ただ、さすがに0.3%はないだろうと思い、調査を開始。40人の重要人物に会食を申し込む中で判明したのは、人々の不正に飽き飽きした態度と、すさまじい額の横領であった。9人の重要人物が、エクソンモービルの有する権益の規模に相当するガス田を手に入れていた。しかし一方で、その規模はガスプロム全体の9%に過ぎず、まだ多くがガスプロムに残っていることも分かった。
・さっそく投資を実行。同時に調査結果をFTやWSJ、ビジネスウィーク等のメディアに一斉に送りつけた。クレムリンは火の海に。同年後半、プーチンが大統領に就任して最初に行ったのは不正問題の浄化であった。
・ガスプロムの株価はその後100倍に。その後も銀行等への投資を行って今に至っている。
その後ビデオによる解説



http://www.youtube.com/watch?v=ok6ljV-WfRw&hl=ja

要点は
・07年に国家安全上の脅威として入国拒否。その後のダボス会議でメドベージェフ氏にビザの発行を頼むが、快諾されたと思ったら、自分のオフィスへの捜査が行われる。持ち出された企業の重要資料を用いて、12.6億ドルがなぜか横領される。その上、2.3億ドルの納付済みの税金が別の犯罪グループに横領される。担当弁護士も逮捕されたりしていて、色々大変。


ブラウダー氏はソロモンで荒稼ぎした人に多いような気がする涙袋をしていた。それは良いとして、最初はアントレ的な視点でビジネスを拡大しながら、いつの間にか命を狙われるような存在になる躍動感。1時間の講演で聞けたことは限られていたが、パワーはすさまじいものがあった。

日本でもジムロジャーズの世界行脚本が結構読まれていたりするくらいなので、90年代央のようなエキゾチックな海外投資というのは、ちょっと今の世界では考えづらい。ただ、同じくらいに誰の視点の中心にもない運用機会・ビジネスというのは存在するはずで、そんな対象に頑なにコミットする人ってこういう人なんだな、という感想を持った。あと、独特の出自というのは別に成功していなくても話として面白かった。そういうものを大切にしながら、ビジネスをすることは大事なんだなあ、と感じた。

2009/10/17

Week 4 終了

今週は宿題やらを片している間にさっさと過ぎていった印象。ようやく、学生生活、という状態に身体が移行してきた。一週間のハイライトは当然ながらCondiの授業であった。ただ、他にもケーススタディでいよいよ深遠なテーマを扱い始めたり、学生間でのグループプロジェクトが始動したりしていて、何かと多忙。


1.銀メダリストの話

Condiとの授業で発覚したのは、自分のクラスにも北京五輪での銀メダリストがいた、ということ。水球で獲得した銀メダルを、なぜかCondiとのツーショットを撮りに行くというサプライズ。ちなみに、同じ学年には一人、ブラジル人のプロテニスプレーヤーがいる。GSBでスポーツができる、という為には、長らくやってました/コーチしてました、というだけではちょっと厳しくて、惑星レベルでのプロであることが必要なのかもしれない。

2.テニス会
スポーツ繋がりでは、スタンフォード日本人会のテニスに初参加。2年ぶりくらいにラケットを握り、順調な衰えぶりを実感。皆さんもレベルが高い。勉強ができる人は上達もうまい、というのを強く実感。学生時代から、ミスが多いテニスを克服しようとしてきたけど、今後継続参加できたら何とかそのあたりから改善していきたい。

3.性格診断
リーダーシップの修練において、自分を良く知る、というのは強く意識されたテーマである。今週、非常に面白く、かつ学習できたのは「自らの素性」をマイヤーブリッグズテストで判別し、それをどう変えてきたか/変えていくのか、を議論できたこと。このテスト、自分にとっては恐ろしく精度が高かった結果が出ていて、分類(外交的・内向的、表層的・文脈的といった項目4種類で性格を16種に分類)もその度合いもばっちり思ったものが出ていた。一言で言ってしまえば、論理的思考が不得意、内向的、情報判断が文脈重視等。これをベースに、どんなスキルを伸ばす必要があるのか、をディープに話し合うという授業があった。
自分が一旦何らかの枠付けをされてしまうと、そこが思考の参照点になってしまう、というデメリットはあるのかもしれない。けれども、それが真摯な悩みの出発点になることも確かで、こんなにオープンな雰囲気のある場所でなければ、面倒に感じて「流し」てしまったのかもしれない、と思った。

4.アジア人の飲み会
韓国、中国およびタイ、というアジア共同体のような飲み会が週の終わりにあった。マンツーマンで話すと何となく感じる、カリフォルニアの雰囲気と、100%溶け込めないシャイなアジア人感情というのが、爆発していたような印象。
こちらの風土は、初心者にはちょうど良いのだが、段々とこちらのコミュニケーション能力が増してくると、本格的なスピードが非常に速いことに改めて気づき、たまに怖気づくことがある。特に、英語圏に初めて住む、みたいな人も、かなりマイノリティーとはいえそれなりにいる中で、同様の不安感というのが、フレンドリーさの陰にはあるような気もする。こういうのを溜め込まずに、積極的に開放する場を設けているのだなあと、素直に感心。うまくついていけないと夏目漱石同じくホームシックになってしまうので。

5.やっぱり肉がうまい
Whole Foodsに行くたびに、肉コーナーで目移りしている。こちらはなんだかんだで、肉がうまい。「○○地鶏」とかがあるわけではないけど、しっかりと管理された環境で育てられた肉類が豊富。
今週はラムチョップに挑戦。滅茶苦茶おいしかった。
材料費的には写っている分で300円くらいのお肉。日本だと中々チャレンジできない(といっても挑戦しているのは妻だが)ものにも、結構気軽に飛びこめる価格帯がありがたい。

2009/10/13

スーパーゲストによる講義

本日と木曜の2回、グローバル経営論の授業はスペシャルな教授が行うこととされ、一ヶ月前ほどから話題として盛り上がっていた。



その人物は、なんと、



















ライス元国務長官。
元々スタンフォード大の政治学教授であり、93-99年の間、副学長も勤めており、本年政権が代わるまで国務長官であった。今年の春から、再び教授職に就いている。GSBで授業をするのは久しぶりのことらしい。必修科目で、64名のクラス相手に二コマ授業をする(6クラスあるので、合計12コマ)ということで2年生からもうらやましい、といった声を聞いていた。
いつもの担当教授も 「今週は Condi Week だぜ!」とノリノリ。

第一回のメインテーマは、国際間での制度の違いについて。一回目は、国家レベルおよび国家間でのコンフリクトが取り上げられ、怒涛のケース3本(+今までに読んだ2本)が事前課題に。カバーされたトピックは以下の通り。

・ドバイ国有会社による米国の港湾買収
・イーベイの中国進出(失敗)
・グーグルの中国における戦略(政府による検閲との戦い)
・ガスプロムと国際政治
・EUでのマイクロソフトへの課徴金

正直幅広すぎる感じで、総花的な議論にならざるを得なかったのは残念なところ。ただ、ケーススタディの実際の主人公であることや、実際にネゴシエーションの場面、政治家としてできることの限度などについては、ノートには残しきれないメッセージがあった。授業中に発言をしたものの、やっぱりちょっと緊張したというか、歯切れが悪かったような感じ。

本題とは違うけど、やはり佇まいがすごい雰囲気を出しているというか、50代半ばには見えない若さ、すごく似合ったスーツとか、そういう外見も印象に残った。


第二回の授業は、日本でもたまに行われる模擬国連の、イランに対する制裁協議版。
事前にケースを読み込み、当日は一人ひとりが6カ国の首脳(トップ、外相、財務相、防衛相)としてのロールプレーを行う。自分はガイトナー。ガイトナーだけど、結局国務長官のヒラリーに伝言や分析を届けたりするようなお使い役。授業の組み立て自体はよくできていて、偽物のNY Timesの記事とか、途中で情勢が変わるような設定があったりと、盛り上がる楽しい授業だった。
ただし惜しむらくは、ライス教授の役割は、最初に指名を読み上げて、ゲームのルールを読み上げ、最後に5分ほど感想的なことを述べるのみに留まったこと。すごいゲストの周りで、ほとんど彼女無視でやんや議論をする、というある種の貴重な体験はできたのだけど、第一回に比べると、せっかくのインプットの機会が格段に少なかったのはちょっと哀しい。

二回の授業を経て、もっとこの人の授業を受けてみたい、と思ったのもあるけど、それ以上に、上述の文章にも見られるようにライス女史に対してすらDemandingになっている自分の姿に驚いた。まあ、それだけ、このMBA生活から得るものを最大化したい、という欲求が身体に染みつきつつあるのだと思う。

当然だけど、有名人が授業をしてくれる、ということ以上に、そのことが持つ意味も考えさせられた。国を挙げて若者を育成する姿勢や、ライス自身が結構授業が巧かったということ、学生側も全く臆せずにブッシュを茶化す質問をしたりしていること等、中々発想が及ばないことが、こちらでは常態となっている。これを不思議な体験としてではなく、日本でも応用可能な事例を考えて、この貴重な体験を活かしたい。

2009/10/11

Week 3 終了

生活の立ち上げフェーズから、徐々に授業に集中していくような段階にある。

1.Section Olympics
日曜に、64名からなるセクション(クラス)同士で対抗するSection Olympicsが開催された。



各セクションごとに共通のシャツとかを用意するケースも発生。しかし、自分の属するセクションはチームカラーのピンクを纏う。こんな色のTシャツは初めて。
チームとして微妙な結果に終わったが、どちらかというと全員で何かをやる、という一体感が重視のイベントで、楽しかった。

2.Wallyball
Olympics後、ウォリーボール(スカッシュ用のコートで行われるバレーボール、横の壁は使用可能)のGSBのチームに混ぜてもらい、初戦を勝利。


ただ、運動会と本競技で、久しぶりに身体を酷使し、月曜は動けないくらいに腰が痛かった...

3.友人夫妻とご飯
クラスで一緒のインド人夫妻に夕飯に誘って頂いた。彼の前職はBCGのシカゴ拠点。問題なく英語はできるし頭は切れる上、非常に親しみやすいキャラクター。インドマグロの話から、なぜかホストが客のツケが払えなくなったときにマグロ漁船に乗る、みたいな話をする。奥さんもおそろしく社交的。多人数で話をしたり、授業の流れを読んで英語を話すのは結構難しいけど、こういう形で少人数で、自分の組み立てた話題で中心で話すのはハードルが相対的に低いのかもしれないな、と思った。

4.車で最大のポカミス
木曜に、朝から晩まで授業を受けた後、そういえばガソリンがそろそろ切れるな、と思い帰宅してから超近所にあるガソリンスタンドで給油。
家に帰ったころに、ふと気づく。あれ、ディーゼルって書いてなかったっけ。レシートを覗くとまさにその通り。普通は走れないらしいのだけど、少量のガソリンが残っていたので走れてしまったらしい。結果はこんな感じに。


人生初のレッカー体験。幸い、プラグとかは無事だったみたいだけど、600ドルくらい修理点検費が計上された。
寝ぼけた時に慣れないことをするとろくな事がなし。

5.ケーブルテレビを導入
大学内の寮のある地域には、ケーブルテレビ網が張り巡らされている。月々50ドル程度で加入可能で、日本語チャンネルも一つあった。NHKの番組がほとんど流れているのは我が家には嬉しい。サンフランシスコベースのアジア・ヒスパニック向けテレビチャンネルでも、週に計10時間ほど日本語放送をやっていたのだけど、晴れて24時間放送、台風速報とかをこの国でも見られるようになった。

6.担当教官と面談
30分ほど、キャリアおよび勉強関連の担当教官に面談頂く機会があった。マッキンゼーの幹部だった方で、今は半引退気味で、自分の属するクラスのクリティカルシンキングの授業と、NPO経営論を教えている。正直、強面コンサルタントという感じで、凄くこわーいイメージを持っていたのだが、授業そっちのけで色々と親身に相談してくれた上で、大前研一氏と横山禎徳氏では、お前はどっちかというと前者寄りだというびっくり評価を頂く。どちらかといえば後者のファンだったのだけど…

7.FBI長官の講演
一時間、現役FBI長官の講演を聴く。いつもは伸びやかなビジネススクールのキャンパスも、この日は探知犬がそこかしこにいたり、シークレットサービスみたいなのがいたりと落ち着かない雰囲気。
講演そのものは正直、あんまり新しい発見はなかったのだけど、元々S大ロースクールの教授だったこともあって、気さくに言えることと、「それは全くお答えできない、すみませんねえ」といった話が展開される。FBIは911以前はパッシブな捜査機関だったが、テロ以降はテロの事前阻止がミッションとして大きく追加されたことや、それ以前は法的に不可能だった部門間の情報共有が行えるようになったこと等、過去数年間の激変の解説が行われた。

8.モルスタ幹部の講演
GSB卒業生のリサーチヘッドの講演も実施された。まとめてしまうと、DWの某社長はひどい社長だった、ジョンマック万歳、ゴーマンはタイプは違うけどすばらしいリーダー、という話の組み立て。金融危機の間、政府から様々な提携話を持ちかけられた際に、自分たちよりも劣化しているところとなぜくっつかないといけないのか、という点について、CEO Mackは頑ななポジションを貫いていた、それがリーダーシップというもの、ということが話の中心にあった。

9.授業関連
授業自体は色々と進展していて、すごい量のケーススタディの読み込み等を行ったりしている。読み込む量が多すぎて、消化も足りておらず、コールドコールに対処できるだけの準備はできるが「時間がなくて勉強ができてない」「知識が体化できていない」という状況。再来週には中間テストがあるので、それに向けて、もう少し体系的に自分の中で整理をしたいのだけど、今後時間はあるのだろうか。。。唯一、ファイナンスの授業だけは何というか楽勝な気分で臨めているので、少し楽をしている。
来週は、まさか、と思えるような某超有名人(一応S大の教授という位置づけ)による講義が行われる予定で楽しみ。

2009/10/03

Week 2 終了

だんだんと、真新しい発見の数は低減しているものの、3週間目に起きたことをまとめておく。

1.発言Of the weekを受賞
グローバル経営論の授業において、日本の小売業が取り上げられた。クラスで唯一の日本人である自分は集中砲火的に質問を受ける。
その中で、日本ではコンビニのPOSシステムが発達していて、消費者行動が見事に記録されており、サラリーマンが「愛妻のパンスト」を買う行動が観察されている、という話が自分に振られた。
「私も(頼まれて)パンストを買ったことがあります!」
は、だいぶウケ狙いで放った言葉ではあったものの、たぶん真面目なキャラとして見られていた自分とのうまいギャップがあったらしい。一週間、このネタでいじられ続けたが、別にHentai!という話ではなく、何というかコミュニケーションの距離が縮んだことで皆が話しやすくなったのだと思う(と、信じたい)。

2.ウェルカムパーティに参加
学校から15キロほど離れた別荘地のような場所にて、仮装パーティ(正装か体操着(学校のユニとか))に夫婦参加。夜21~25時という時間帯だったので、Hit and Awayで帰ってきたのだが、こちらに来てからというもの、生活セットアップで学校行事にあまり参加できていなかった中、良い滑り出しとなった。

3.授業のテーマ「人をどうやって動かすか」「コネをどうやって作るか」
組織行動論の授業は、毎回独特な内容が展開されている。今週の2コマは、人をどうやって動かすか、という事例を、12人の怒れる男たちを実際に見ながら評論したり、「お願いごとをポストイットに書いて他の人に助けを乞う(何も助けてもらえない人も発生)」といった作業を通して、ダイレクトに人が置かれるシチュエーションによって、他人との距離を縮めたり、コネを作り上げたりするプロセスを実感。いかにもなビジネススクールの授業で、今まで経験したことのない発見があった。

4.CATセミナー
GSBでは最初の学期における必修授業として、Critical Analytical Thinking(CATと略される)という授業が課されており、宿題等のウェイトとしては結構重い位置づけとなっている。先週はグーグルの中国進出についての討議が行われたが、今週はNRSRO(米国の格付け会社制度)についての議論であった。
詳しくはググって頂きたいが、NRSRO制度は米国においても金融オタクの話題である。課題はそれをかなり単純化したものではあったが、仕事で考えたり本で読んでいたトピックがそのまま全一年生の作文の対象となっている、という事実に驚いた。また、金融機関出身者でも、結構意見が分かれる(政府のみが格付を付すべき、というHF出身者)というのも驚きであった。

5.自転車の盗難
まだ現在進行中だが、チェーンをかけて学校の自転車置き場に置いていたチャリが紛失。こちらでは、防犯用としてチェーンは不十分とされており、U-Lockと呼ばれるいかつい輪をはめるのが普通になっているのだが、このときに限って授業に遅刻しそうでそれができなかった。わずか1.5時間の間の凶行に涙。

6.Whole Foodsに心酔
マウンテンビュー近くに、Whole Foodsという、Queen's Isetanに近い位置づけのスーパーがある。ここの野菜・果物・肉等がおいしくて、たぶんSafewayは緊急避難的にしか使えなくなるような印象。

7.ご近所づきあい
今住んでいるEscondido Villageは基本的に子持ち世帯が多くて、落ち着いた環境になっている。中には、子供がやんや遊べる砂場やら玩具やらが沢山あり、共同の庭となっている(日中は結構子供が遊ぶ声でうるさい)

大きな地図で見る

週の初めに、顔合わせパーティが催され、日本人のご家族と、日本が非常に堪能な中国の留学生の方とお会いした。スタンフォードにも、探せば日本語人口が結構いるが、キャンパスがでかすぎてなかなか一箇所に溜まる、ということがない。まあ、その方が個人的には良いのだけど。



2009/10/01

チーム

2週間半を経て、スタディグループに加えて、8人で討論等を行うチームでの作業ややり取りが増えてきた。既述のスタディグループのメンバーも含まれるものの、自分の属しているチームのメンバーの初期のイメージとして、以下に記しておきたい。


  • R:投資銀行経由でヘッジファンドから来た、いかにもな米国バンカーの風体。声が大きくて、正直何を話しても交渉ごとでは負けそうな雰囲気を醸している。実際に、交渉能力も高くて、どの段階で情報を出すか、何をボトムラインに持っていくか、絶対に譲らない態度、といったあたりからは間接的にいろいろと学べるものがある。その上で、結構まめに補習のクラスに出ていたり、自分はこういう貢献が足りなかった、といった自戒もできる。
  • T:既にコンピューターサイエンスの修士号を持つ中国人女性。頭の中身は完全に米国人で、既に東海岸で医療ベンチャー2社を創業済み。議論をまとめるのが非常にうまく、経営者の頭とエンジニアの頭がフル回転する凄さを毎回見せつけられる。
  • J:金融工学から軍隊に入った異色のキャリア。奥さんもロースクールの学生で、結婚3年目にして、イラクから帰ってきてから最初の同居生活になるとのこと。周囲や英語の下手な自分への配慮、ロジカルな考え方、抜け目の無い思考が、軍隊で鍛えられた大きい声に乗せられて放たれると、すでに完成されたリーダーシップを強く感じる。
  • Z:大手コンサルからの社費派遣生。学生時代は東海岸で歴史を専攻していたとのこと。文章を書くのがうまく、グループでのレポート等は本人がキーボードにかじりつき、周囲がやんや投げるトピックを見事な文章にまとめあげていく、というスキルを持つ。また、議論にもクリティカルな点を常に投げ込むため、彼が喋るときには場が静まる、という評判を既に築いている。
  • K:大手通信会社出身の家族持ち。おそらくだが年長者で、いわゆる若い米国人とは異なる落ち着きと、影響力や、深みのある発言がチームにまとまりを与えている。一緒にいて、もっとも安心できるキャラクター。
  • H:大手コンサル出身の女性。話がうまく、ディスカッションなどは自分がファシリテーターとしてがんばったつもりでも、いつの間にか彼女が場を仕切っている。何というか場を持っていってしまう能力が高く、コミュニケーション能力とは何かを具現している。
  • A:8人のグループの中で、自分と並んで英語がやや苦手な外国人女性。大手消費財会社のペルー拠点出身で、ファッション業界を目指している、とのこと。ただ、英語が苦手、と聞いていたのだけど、自分にはぜんぜん苦手なようには感じられない。だいぶ高いレベルで悩んでいるような印象を持つ。
  • そして自分。
こうやって書いてみると、改めて良いチームメンバーに恵まれたものだと感じる。家族持ちも案外多くStudy-Lifeバランスが割と管理できそうなのも心強い。

ただ、課題は山積。議論の様子を取ったビデオ(GSBの授業では、議論をビデオ録画し、お互いにフィードバックする、という恐ろしいカリキュラムがある)を見ていると、あまりに自分が溶け込めていない様子が明らかとなっている。そのため
、そもそもフィードバックを得るための機会を逸していることが多い。早くコミュニケーション能力を上げて、議論におけるアジェンダ・セッティングまで影響力を発揮したいところ。まずは現地化・同化して、守・破・離の最初のステップを早く身につけたいと思う。

2009/09/27

Week 1が終了


1週目はオリエンテーション的色彩があったものの、とうとう本格的に授業が開始。

合計5科目(企業金融、戦略論、リーダーシップ形成、クリティカルシンキング、グローバル経営論)について、おおむね週に2回ずつ授業があり、ケース一つ、リーディング50ページ程度が授業ごとに課されている。ものによっては100ページを超える場合も。

とにかく時間が捻出できない中で、クラスメートは夜飲み会に繰り出したりとImpossibleを行っている。すごすぎる。

2週間終わって、まったく会話ができない「うなずきマシーン」からは多少脱したものの、やはりこちらの人の会話のレベルにはついていくのが大変。(1)言語能力の壁、(2)地頭の壁、(3)コミュニケーションの壁、の3つでいうと、(1)、(2)はしょうがないが、(3)はとても高く、努力次第といえ、たいした高さだと思う。

ただ、だんだんと慣れや、力の抜き加減も体得中。一度は「今コールドコール(先生からの指名回答)されたら終わる」状態で90分耐え抜く経験(ネームカードを読めないように級友の頭の後ろに移動。我ながらセコすぎる)をした。

また、日本から3名のお客様をもてなす。うち、1名は結婚式でスピーチをしてくれた家内の親友で、都合3泊して頂いた。新しい家でのアコモデート方法やら、家具の調達やらがいろいろと上達。加えて、他学部への出願希望者に学生を紹介する、といったロジスティクスも経験。もう先輩ヅラするのも僭越なものの、自分が昨年10月に経験した状況を思えば、できるだけ還元したいとの思いでお手伝い。日本人同士での異国での体験には、日常にはない感慨が残り楽しい。

日本からの学生の研修旅行の打ち上げ会にも参加。さまざまな、こちらで活躍されている方々にお会いし、渡辺千賀さんにこちらでの生活情報を教えて頂き、励ましいただくという栄誉にも与る。シリコンバレーに来てみようと思った契機となった本の著者に簡単に会えたりするのは、やっぱり有難いことだなと感じた。日本でのビジネススクールの集まりにも、冨山さんが気さくに話しかけてきてくれたりと、正直こんな身分でよいのだろうか、みたいな経験が多い。ありがたや。



2009/09/19

Week Zeroが終了

開始が遅いとかごねていたものの、到着し、授業が開始して一週間目が終了。
この週は、Week Zeroと称され、授業は2種類しか行われず、他はオリエンテーション等に費やされた。今年入学の学生数は385人、これらが6のセクションに分割され、約60人超のメンバーで基本的に授業が進行する。


会計学の授業
会計学は、応用・経験者向け・基礎編の3段階にレベル分けがなされている。もっとも、PE出身者が基礎コースにいたり、物理学出身のエンジニアが応用にいたりと、直観と合わない変更もなされている模様。全4回という、入門的位置づけ。
いちおう、金融機関出身ということで応用コースに配属された。会計の授業は、BS・PL・CFの見方という、非常に基礎的な事項に終始している。ただ、よく考えると証券アナリスト試験(もろくすっぽ取り組まなかった)程度の知識しかない自分にとっては、良い基礎固めになった。渡米前にかろうじて読んだ三位一体理解法の本は、その準備として大変役立っている。
また、4回目の授業においては、バランスシートと収益構造から企業名をリストから当てる問題も出された。それまで、なかなか英語でグループワークをやるのには苦労していたのだけど、金融用語であれば、外国人相手にそれなりに体力を発揮できるだけでなく、確実にコミュニケーションを行えることが確認できた。変な見方かもしれないが、ファイナンススクールに通えばこの点はもっと早く認識し、ある意味楽していたのかもしれない…苦労は買ってでもするべきなので、何というか良い経験になっているものと信じる。

チームワークの授業 (Managing Groups and Teams)
会計の授業は割と溶け込みやすかった一方、チームワークの授業は精神的にシビアなものであった。毎日、計5回の授業が行われ、毎回なんらかのゲームが行われた。初回は脚本を読んで殺人犯を当てるゲーム、2回目はレゴの形態を模写するゲーム、3回目は砂漠でのサバイバルに必要なツールを当てるゲーム、4回目は点数の異なるおはじきを取引するゲーム、5回目は予算制約のもと、16班に分かれて絵を描くゲームと、どれも小学校でやるような感じではあるものの、大人がそれを行うとヒエラルキーが生じたり、排他的にならざるを得ない状況になったり、真剣に喧嘩したり、といった状況が生じる。また、別に犯人を当てる能力や、交渉・取引の能力が大事なのではなく、その過程で生じる人間的ないざこざが焦点にあったりして、よく練られたものだと素直に感動。

ただ、1週目とは思えないほどにハードな議論が交わされていたことは、ある意味うれしくも厳しい誤算であった。また、犯人探しゲームなどは、20分で文献読んで~、と教授に指示されるものの、情報の半分程度しかカバーできない、といったハードルを早速感じた。授業でやっていること自体は楽しく、面白かったのだが、議論の輪に途中参加することは不可能に近いほど、会話と思考が高いレベルで行われていて、なかなか参加意識を持つことが難しかった。トップ校ゆえの性格ではあるかもしれないが、英語が一人前ではないことに、暗にエクスキュースが許されないような雰囲気がある。また、教授が質問を投げかければ、まず10本の手が挙がるような状態の中で、真にInsightfulなアイデアを述べることは、結構ハードルが高い。週の途中で、個性を出すことはしばらく諦め、とにかく頭を切り替えて、まずは発言することを自分の目標として再設定した。年内のうちに、この辺のコミュニケーションスキルを(飛躍的に)上げて行きたいと感じる。
それにしても、英語での思考能力が数割ダウンではあるとはいえ、周囲のレベルは非常に高い。正直、こんなに高いとは正直、想像すらしていなかった。ゲーム中、たまたま当たった交渉相手が、よく聞いたらヒューミント出身だったり、CIA出身だったりして、もう誰も信じられなくなるような(笑)スキルの高さに出会ったりする。また、軍隊出身者も多く、はっきりと物を大きな声で主張したり、目標設定とコミットメントがありえないくらいしっかりとしていたりもする。米国式のコミュニケーションと、英語能力、思考能力やパターンの違いという、3つの壁があることを認識して、どこまで同化していけるのか、まだ図りかねているような段階。


学事オリエンテーション


S大のプログラムでは、平均的な学生の社会人経験が4年程度であることもあり、独身の学生が多い。独身学生の大半は、チャールズ・シュワブの創設者が寄付したSchwab Residential Centerに居住しており、いかにもな独身寮生活を一年目の間は享受することになる。
しかし、既婚者や、同寮に入れなかった学生は、そのマジョリティの計画するパーティーやイベントへの参加率が必然的に下がる。これが2カ月ほど継続すると「FOMO(Fear of missing out)」と称される「仲間はずれじゃないか症候群」状態に陥るらしく、学事センターから「FOMOは一過性の病気、いずれみんなSchwab生活に飽きてきますよ」というアナウンスがあったくらい。
また、「我々は入学にあたって皆さんを個性で選んでいます。なので他人に合わせるようなことは考えないでください、Be yourself please.」と念を押したりもしている。ほかにも、「皆さんは大学で、それこそ周囲で競争相手がいないくらいに優秀だったのでしょう。でもここでは、その中でさらに競争が行われたりします。当校での評価でPass(優良可の可)を得ても、それは半端ではないレベルの可であると思って、自信を持ってください」といったコメントが行われたりしている。
週の終わりには、「皆さんの中には英語が母国語ではない人達もいます、ゆっくり話していてもちゃんと聞くように」といった、通達もあった。これには保護されて助かるような、甘んじるのを許可されるのがいやな様な、複雑な印象を持った。

加えて、Honor Codeと呼ばれる学生同士の協力に関する一定の制約についても、アナウンスが度重なり行われた。米国の大学では学生同士が協力することを、原則禁止している。その上で、教授の許可により、それを可能としているケースが多い。日本ではまず良く分からない概念ではあるものの、学生同士のフェアネスを確保することがその根底にあるとのこと。ゆっくりと順応していきたいところである。


スタディグループ
授業によりけりではあるものの、64人のセクションは4分割され、批判的分析をテーマとする16人の少数クラスが設定されている。さらに、それがリーダーシップを学ぶために2分割され8人のグループに、加えて細かいスタディグループとしてそれがさらに半分になり、最小単位では4人のグループとして、今後しばらくは学習を行うことになる。自分のグループは、人のよさそうな軍隊出身者(ただし声はデカい)、北京出身のITエンジニア(S大工学院卒)、ベイン出身の米国人、という布陣。正直、まともな英語が話せないのが自分だけで、そこそこ配慮をしてもらっているような気はするものの、やはりちゃんと議論に貢献していかないと、というプレッシャーはある。HBSに比べればフレンドリーな環境であるだけに、それには甘えずにやっていかないと。


授業の課題で作成した絵。中央の女性の顔を担当。ほとんど議論には参加しない寡黙な日本人技術系人材をアピール…
ちなみに、授業の構成としては、3人の顧客(生徒)が一定のスペックと予算をクラスに指示、クラス内で指名されたマネージャーが絵の具や画材等の値段を気にしながら、時間内に水彩画を作り上げるというもの。画の小さな原画は16分割されており、各テーブルで作ったものを張り合わせなければならない、というもの。計80分のみの作業時間の中にしては、かなりうまくできたほうだった模様。皆感動して写メールやら記念写真を撮っていた。