2009/12/22

GSB Dinner on breakへのご参加ありがとうございました

お陰さまで沢山の方にご参加頂くことができました。ありがとうございました。引き続き何かございましたら、ttaki あっとstanford.eduまでどうぞ。



2009/12/09

初めての、ラスト・コメント

First Quarterもいよいよ終わり。
MBAでは結構あることのようだが、いくつかのコースの最後の授業では、熱のこもった人生論が教授から語られた。ハーバードのは本にもなっている(参照)。さすがに一コマ割かれたわけではなかったけれど、グローバルのクラスでの話は強く記憶に残るものだった。

グローバル経営論のバーネット教授はユーモアたっぷりで、熱のこもった展開をする方で、いつも週の初めから元気をもらっていた。授業の内容は、米国人の目線から、他国でビジネスをすることの障壁や、どんな新しい人生観が求められるのか、という点を突き詰めるものであった。正直なところ、かなり米国目線の内容であった気もするが、ライス女史の授業や、パンストの話(笑、参考)とかも含めて、自分にとっても発見と刺激がある経験だった。

バーネット氏は最後の授業をこう始めた。
By the way, why are you guys here? I'm asking seriously!
(で、君たちなんでここにいるの?いやマジで。)
級友から、「学ぶため」「ネットワーク」「就活」といったテーマが一しきり出尽くしてから、だんだんと質問は具体的にこのコースはその欲求にこたえられたのか、といった展開に。
「ケースの中で、中国の扱いが偏見に溢れてて厭だった」、「結局Different country is different以外よくわからなかった」といった超正直なオピニオンも出た。これらの苦情にも近いコメントに真摯に答える教授の姿はカッコ良く、生徒の人望を集める理由が再度良く分かるものだった。国と国の間の価値観の違いなど、確かに四半期で「教える/教わる」ことなどできない。

図に乗って自分も発言してみる。
「アジアには、無知の知って言葉があるんですが、この3カ月で、それがようやく体感できたような気がします。」
するとバーネット氏、腕を組んで凍りついてしまった。20秒ほどうつむいてから一言
「その言葉を、初めて聞いた。実際にどんな経験があったのか、教えてくれないか。」
「小さいころロンドンに住んでて、日本に帰国してから、仕事をしている時も、米国人もどことなく同じような人たちだろう、と思ってた。だけど、実際にちゃんと身を投じてみると、日常会話や若者の流儀も違うし、こっちの英国人はカリフォルニア文化に結構疎外感も感じてたりするし… グレーヴィーの味(参照)もかなり違う」
しょうも無いオチをつけたので、案外身も蓋もない話だと分かったのかもしれないけど、何だか納得してもらえた様子だった。

話は逸れるが、MBAの教授のコミュニケーション能力の高さには、いつも驚く。前日までは何も読み込んでいない学生の未熟な会話を、徐々にクラスの中で伝えたいメッセージやフレームワークの理解へと落とし込んで、かつClass Participationを高めるインセンティブを振りまくのは大したもの。学期の初めから、徐々に築かれる先生と生徒の信頼感の良さというのは、双方向の会話が少ない日本の大学では中々感じられなかったことで、どことなく豊かな気持ちになった。

バーネット氏は更に、授業の終盤、またも独白を始める。
「スタンフォードからの合格レター、いや、最近はe-mailか、を受け取った時に、君たちはたぶん凄く嬉しかったのだと思う。だけど、20年後くらいには、それが『普通ではない』人生に君たちを招いてしまったものとして、複雑な思いで見ることになるかもしれない」
「GSBのマントラは、Change the worldであり、この学校に属してしまった以上、君たちはこの呪縛から離れることはできない。「すばらしき平凡」という考えを、心の片隅で必ず疑うことになる。平凡は結構いいものなんだけどね。」
「呪縛から逃れられないからこそ、真剣にどうやったら『正しき奇人(correct non-conformist)』になれるのかにこだわって欲しい。組織や、ひいては時代を変えられるのは奇人しかいない。ただ、奇人は往々にして『単に間違ってるだけ』ということも多い。それにはならないように最善の努力をしつつも、やっぱり『みんなと同じ考えで、結果的に正しかった』という事実に満足しないで欲しいと思う。」
「こうやって口で言うのは簡単だけど、実行したら、本当につらい人生になったりする。本授業では、グローバルな見方の中で、たとえばステレオタイプが生む怖さや、判断のフレームワークを持つことの大切さを伝えてきたけど、そういった助けがあることも、マントラを唱えてしまったGSBの贖罪みたいなものだから、ねえ。」
このあと、何というかぼそぼそと、暗くも力強い話が続いたのち、ふと気づいたように生徒を見まわし、「あ、これで終わりです」と打ち切る。生徒はスタンディングオベーション。

何だか、授業というよりも、発想や創造が活発に行われる場、というのを見せてもらっている気分になった。

First Quarterは、もう本当に慣れないし、文献も読めてないし、ケースも片手間でしか準備する時間がないし、寝られないし、しゃべれないし、同級生の言うことも聞き取れないし、と、時間・能力面でのないないづくしを実感する3カ月だった。2年間ではあと5回、Quarterがあるが、二年生になるころには、もう少し楽になるとは聞いている。とりあえず、「頭でっかちだった自分にとって」たしかにLife Changing, Challenging, InspiringだったQuarterを乗り切った自分を、あんまり調子に乗らない程度に褒めておいてあげたい。

2009/12/05

キワモノ期末試験:Executive Challenge



リーダーシップ・ラボの期末試験は、GSB一年生が47のチームに分かれて戦うExecutive Challengeである。



この企画、全世界から蒼々たる卒業生を呼んで、彼らを相手にハードな設定のロールプレーをする、というもの。学期の初めに聞いたときには恐ろしかったが、チームに支えられて精神力が鍛えられてきたせいか、割とリラックスして臨むことができた。

8人のチームは4×二人組に分かれ、それぞれ異なるケースに挑む。内容は以下の通り。
1.価格的には魅力がある買収案件を、強固に反対する株主に対して説得
2.電気自動車ベンチャーで製品スペックについて妥協することを、頑固な社内エンジニアと協議
3.突如クビになったCEOの地位を継いだ自分が、モラールの著しく低い役員にやる気を出させる
4.魅力的な技術を持ったベンチャーに、仲の悪いメンバーから構成される4人の幹部を全員ヘッドハントする

書いているだけでなんというか疲労感が出てくる設定だが、与えられた15分間の間に、ミーティングを初めて、最終的にコンセンサスを得ることが目的である。15分は圧倒的に短いと言わざるを得ず、自分のチームの成功率は50%。何ともハードだった。
ちなみに、採点はされるが、実際には出席点のみなので、安心してリスクを取った実験ができるようになっている。

自分の出たケース1は、M&Aの案件を、自分のヘッジファンド出身のRと説得するものだった。詳細はこんな感じ。

問題
学生二人が社長・会長を務める会社が破産状態にある製造業を買収することを決定。ただ、ターゲットはダイオキシン訴訟を抱えており、自社の株主のSRIファンドは強固に反対中。また、それとは別のヘッジファンドは自社をリクイデートすることに夢中。既に取締役会9名のうち5名の賛成を取り付けたが、あと2名必要な状況。15分で残り4名中、2名の賛同を得よ。

問題として書いてみると、「回答欄を埋める」という作業であれば、正直なんとでも書くことができる気がする。しかし、それを生身の人間に対して実践させ「怖い思いをさせる」というのは、重要なプロセスだと思う。

結果的に、自分たち二人は、金融用語に踊らされたというのもあって、人間的な説得をすることができなかった。開始3分で、もうちょっとフレンドリーかと思ってた審査員が牙を剥いて、「俺は納得してないぞ!」とキレちゃうのだから、英語力以前の、胆力みたいなのを試されている気すらした。15分が経過してからは、一転して親善モード。何がいけなかったか、どうすればよかったか、を7名の卒業生から逐一フィードバック頂く。中には、「こんな課題が自分の学生時代になかった」「俺もこれは無理だと思う」みたいなコメントも。
審査員も、不動産ファンドの社長とか、上場前にグーグルの役員だった人とか、おっかない人たちだったこともあり、ここで得た教訓を、勉強となったと言わずして何と言おうか。。。

同様に他の3件のケースをこなした後、夜は500名強での懇親会。参加者の中には、Intuitの社長とかも来ていて、すごいものだと改めて感じる。懇親会の傍らにはネットワーキング用のブースもあった。
フレンドリーなコミュニティの付き合いというのは、簡単に言うことはできるものの、実際にこれだけのメンバーを集めたうえで、フランクな関係を簡単に実現しているのはすごいと感じた。そして、ここに入るために、多くの人が巨額の投資をしてきている。
米国というのは階級社会的なのだなあ、と改めて感じる「期末試験」だった。



(参考)
昨年の模様はこちら