2009/11/25

ワシントンでの修学旅行


サンクスギビングの週の月・火曜を利用して、学校のパブリック・マネジメント・プログラム(公共政策やNPO経営等が中心)の修学旅行に参加してきた。2年生向けの一行に、1年生十名余が抽選で加わる形式であり、運よく参加することができた。ミーティング相手は以下の通り;

1.国家経済会議の元ディレクター
2.エネルギー省の局長およびCFO
3.ケビン・ワルシュFRB理事
4.ビル・メリンダ財団の水質管理プログラム責任者
5.アショカ財団の創設者とディレクター
6.経済諮問委員会のシニア・エコノミスト
7.ハーブ・アリソン元TARP監督財務次官補(元FNMAのCEO)
8.メディケア・メディケイド研究所の実験プログラムディレクター
9.ゼーリック世界銀行総裁

実は、ワルシュ理事の枠は、当初バーナンキ理事長が予定されていたが、議会での公聴会が入りやむなく変更となっていた。一番の目玉が変更ではあったものの、「公共政策の専門課程にあるわけではない」学生が「入門的に事情を聞きに行く」相手としては、豪華すぎる、の一言に尽きる。

個人的な収穫としては、今までほとんど触れたことがなかったNPOに関する話を聞けたことが大きかった。ゲイツ財団とアショカ財団といえば、片や世界最大の慈善団体、片や世界で最も有名なソーシャル・ベンチャー・ファンドである。ゲイツ財団の方(GSB卒業生)は、なぜそのようなキャリアを続けているのか、といった話を個人的なレベルで掘り下げて聞くことができ、単なる関心だけでなく、モチベーションや、一筋縄ではいかない難しい問題に挑むことの大切さを教えて頂いた。他方、アショカ財団の創設者の話は、不躾な感想ではあるがEntertainingではなかった。ソーシャル・「ベンチャー」であることの大切さを、何度も繰り返し聞く中で、成功する「新しい概念
の組織を作るためには、愚直なプリンシプルを宗教家のように説く人が必要なことを実感。

多くの人が良かったと述べたのは、ハーブ・アリソン元TARP監督者(こちらもGSB卒業生)である。TARPは、金融危機の中でも国民的議論となり、政府の範囲・役割の曖昧さの境界線にあった存在である。
少し意地悪に、投資銀行の未来や、金融イノベーションが生まれる余地について質問してみたが、
「金融イノベーションはもう投資銀行に頼る時代じゃないし、今後はヘッジファンドや独立系の業者が中心になるだろう。金融産業でキャリアを歩みたいなら、自分の
強みが『珍しい』エッジにあることを大事にするべきだ。自分はメリルリンチのパリや東欧オフィス代表に一人で立候補した歌舞伎者だったけれど、それが、リーダーシップ能力の基礎になったのだと思う。人生は一回しかないし、ユニークな機会を求めるべきで、間違っても2000人のバンカーの中で競争するようなレースに自分を突っ込んではいけない」
と、「有名人」としてではなく、「学校の先輩」として真っ直ぐなアドバイスが回答として返ってきた。これまでも繰り返し、米国人の独特のコミュニティ意識を感じることはあったけれども、それが世代間でも生きていることを実感する一瞬だった。

その他にも、エネルギー省では、元々オバマ大統領のイリノイ上院選時に真横でアシスタントをしていたGSB卒業生が30歳前後で再生エネルギーのマーケティング戦略部長として政治任用されていたり、景気刺激策の政策公募担当局長がPEファンド出身だったり、元ロケット・サイエンティストがCFOとして予算の切り盛りをしていたり、、、想像以上に、この国における中央官僚の姿がリーダーシップ能力主導であることに気付かされた。また、公務員の人たちのモチベーションをどうやって上げているのか、といった点を随時聞き、その場で思った疑問をぶつけられる機会となったのが、本当に貴重だった。

修学旅行中のミーティングは、政府やNPOといった普通のロジックが通用しない領域での話であったこともあり、教科書的なビジネススクールの授業内容とは異なる、数か月ぶりに「仕事脳」を使うものであった。ミーティングの合間の話も自然と公共政策の話になったり、日本の政権交代の分析を求められたりと、普段のクラスメートと違うモードで話す機会にもなった。抽選に漏れてしまった多くのクラスメートにもいずれ還元できるように、今回学んで、考えたことをフィードバックしていきたいと思う。

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