さほど有名な所ではないのですが、後輩のH君がその昔、一生懸命行動経済学の勉強会をやってくれたこともあり、ぜひとも行かなければ、と思っていたので。
マーケティングの理論でよく取り上げられる話として、「あまりに多い選択肢よりも、少数の選択肢の中から商品を選ぶほうが、消費者は購買に動きやすい」という仮説がある。この理論を持ち出すときに、かなりの頻度で取り上げられる論文として、スーパーでのジャムの購買行動を観察したIyenger and Lepper (2000), ”When is Choice Demotivating”(参照PDF)がある。
実験の内容・結果は以下の通り:
1)ある高級スーパーにおいて、学生扮するWilkin & Sons(英国の王室御用達ジャムブランド)の売り子がプロモーション・ブースを設置。半分の時間は、24銘柄(イチゴ等のありがちな銘柄は除かれた)の試食を実施、もう半分の時は厳選された6銘柄(2つは人気銘柄、2つは中庸な銘柄、2つは不人気銘柄)の試食を実施した。
2)試食テーブルに来たお客さんは、ジャムの一ドル割引券をその場で入手し、試食したあと、気に入った銘柄があれば、後ろの商品の棚まで取りにいく必要があった。
3)24銘柄を提示されたお客さんのうち、ジャムを実際に購入するにいたったのは全体の3%に過ぎなかった。一方、6銘柄の試食をしたお客さんの購買比率は30%にも上った。
この結果から、消費者の限定合理性とか、Choiceが多いことは必ずしも良い判断につながるわけでもない、といった結論が導かれ、様々なジャンルの実務/研究に応用されている。たとえば投資信託の販売においても、実際には購買可能な数百銘柄のリストを見せるよりは、厳選された/代表的なリストで顧客に提案を行う、といったアプローチが取られている。
さて、この実験の現場となったのが、スタンフォードの隣町メンロー・パークにある、Draeger'sという高級スーパーである。初めてこのスーパー・チェー ンに入ったのだけど、明治屋と紀ノ国屋スーパーを足したような、とにかく高級路線。1300ドルのワインとかを普通においてあったりする。目を見張るのは、 中規模のスーパーであるにもかかわらず、息を呑むような商品のラインナップ。
そして、これがそのジャム売り場である。
なるほど、24銘柄という数は、確かに「購買に至る」には多い、とベタに思った次第。
ちなみにここのスーパー、ほとんどのお客さんが明らかに富裕層な雰囲気を醸している。普通のスーパーのつもりで行ったので40分ちかくうろうろした挙句、ジュースと殺虫剤だけ買うという、何とも色気のないことをして帰ってきた。
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