2010/02/22

ソーシャルメディアの扱われ方

シリコンバレーに来て以来、興味の湧いたものの一つは、ベタではあるが、ソーシャルメディアである。とくに、ソーシャルメディアの中での、FacebookとTwitterの扱われ方の格の違いを感じさせられることが何度もあった。

2社への評価は賛否両論。ビジネスモデルの評価で滅茶苦茶厳しい評価を行うことが多かったストラテジーの教授も、Facebookのモデルについては、今自分が知っているビジネスの中で最もポテンシャルを感じるもの、と言っていたり、片や、ウェブドメインの買収を行う卒業生は、あれは誇大に扱われ過ぎだ、と一蹴していたり。Twitterについては、FBほどの普及率はない(日常的な米国人との会話の中にもさほど出てこない)ものの、ユーザーの密着度と、必ずといっても言及される度合い、もう成長がピークアウトしたから興味がない、といった悲観論も含めて、ある程度の産業のポテンシャルに対する常識が共有されているのが面白い。

そういえば下記の、とある有名スタンフォードOBに関する動画の中でも言及があり、
http://nbcsports.msnbc.com/id/22825103/vp/35505777#35505777

「世間をお騒がせし、申し訳ありません」という謝罪はソーシャルメディアで行うのが効果的ではないか、と指摘されている。ブログやTweetで、メッセージを確実に、必要な量だけ届けられるという意味では、記者会見を打って、下手にリスクを晒すよりは良いと、こっちの人は考えるのかもしれない。


ソーシャルメディアは、今学期取っている授業の中では、Eコマースと、マーケティングの中で言及されることが多い。

Eコマースでは、FBをまだ取り上げていないので、新たにメッセージが出てくるのかもしれないけれど、基本的には、スタンフォードの戦略論の中で出てくる、DSIR(Demand Side Increasing Returns)の概念の中で、ネットワークが持つ価値とくっつけた議論がなされている。もはや、これも標準的な説明であるけれど、ユーザーが多ければ多いほど良いことや、他の派生的なビジネス機会、ネット上の広告宣伝の付加価値、といったことに紐付けて、その効果を検証する課題などが課されている。

マーケティングでは、もうちょっと「チャラい」アプローチが採らている。端的にいえば、とりあえずFBやTwitterやYoutubeも含めて、ウェブを使っている広告戦略がどんなもんか、素人的な意味を理解しましょうよ、という印象。
特に取り上げられたのは、(1)ドミノピザ、(2)Dove の二つのキャンペーン。

(1)ドミノピザ
Youtubeで「ドミノピザはまずいと思われてるけれど、実は色々R&Dをしていてかなり美味しいんだよ」というメッセージを流して、その反響を用いるキャンペーン。



このムービーに対する、クラスの反応は8割賛同、2割反対。賛同する側は、自分たちの立ち位置を良く分かっている、それにプロアクティブに対応しているのでまとも、という感想だった。
しかし、私は2割側。ドミノが別に(日本の宅配ピザと比べても)そう劣った水準にあるとも思えないし、ちょっと宅配込みで高いとは思うけど、ネガティブな理解を敢えてプッシュするもんじゃないだろう、と感じていた。

授業の中での、ソーシャルメディアを扱う際の注意点は、言葉は悪いが、とにかくどういう方向に炎上するのか、をちゃんとコントロールすること、であった。通常、コントロールするのは、ウェブの特性からして不可能にも捉えられるのだけれど、ある程度の常識や出す情報の方向性とかから、そう外すこともない、という印象を受けた。

(2)Doveのイメージ広告
Doveは、複数の商品を束ねたCMを作る戦略を採っているのだが、2002年頃から、日本人の感覚からすると、ちょっと変に思われるかもしれないCMを打ち始めている。それまでの「造られた美」から「個人の美を大事にしましょう」という方向に、かなり大規模なキャンペーンを打ち続けている。




この広告戦略の効果は非常に大きなものだったのだと、少なくともケースは指摘。
ただ、この方向性はちょっとエスカレートして、より過激なメッセージを送ることにもつながった。

オフィシャルな映像なのですが、後半きつい描写が入ってます。


ここまでやってしまうと、ちょっとそれはどうかと思う、という人がクラスの中でも多数派を占めるようになってしまう。「化粧品は、そこそこの夢を買うことも付加価値に含まれているのに、それを破壊してどうするの」というのが、その中心的な意見。
教授によるとこのCMの反響は、あまり芳しいものではなかったのだそうな。

その一つの分かりやすく、いかにもウェブ的な批判というのが、Doveと同じP&GブランドのAXEは、滅茶苦茶下世話なCMをやっているじゃないか、という点。



Doveへのダメージがどれくらいあったのかは分からないのだけれど、ウェブ上だと、一つの点を誇張して美点凝視してもらおう、とする戦略は絶対にうまくいかない、という点が、授業のKey Takeawayであった。

今学期の終わりころには、また異なる見方を持つことになるのかもしれないけれど、今の時点でソーシャルメディアに感じる、成功するためのテーマは、2つ。

(1)企業が全体として提供しているサービスのメッセージに、ブレがないこと。
(2)何らかの「この企業にしかこれはできない」と思わせるExcellenceが必要なこと。

ということである。どちらも、相対的にはスタートアップの企業に向いたアプローチであり、複合的、歴史的なコンテキストを持つ企業には、禁止的ではないが、不利に働く要素なのだと感じた。


(おまけ)

ちなみに、他のソーシャルメディア、たとえばLinkedinやSecond Lifeについては、あまり言及されることが少ない。Second Lifeについては、Eコマースのケースで取り上げられたものの、学生や教授の反応や感想をまとめてしまうと

Second Lifeは使いづらいし、住人はちょっときもち悪い

というものだった。
昨日、アカウントを作ってみて、一時間程度でどこまでできるか試してみたのだけど;

(1)無料で選べるアバターが少ない
(2)何だか色々顔とかいじれるぞ
(3)とりあえず着せ替えさせようとしたら、なんか全裸(白い靴下だけは着用、笑)になっていて困る
(4)辛うじてジーパンとシャツだけ着たけれど、髪の毛が取り戻せない
(5)髪の毛が同じく取り戻せなくなっているアバターを発見して、「困ったね」と会話を交わす。

というところで、とりあえず体験時間は終了。ものすごく時間を投資すればよいのだろうけれど、自分にはまず無理だと直観的に思えてしまった。ぜひ、一時間だけ、やってみることをお勧めします。


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