2009/11/07

Week 6 終了

試験を終えて、二日ほどしっかり休暇をとったら一気に頭がなまってしまい、今週集中力を持続させるのがなかなか大変だった。

1.グローバル経営論のジャパン・セッション
本授業、ラストの数回は国や地域に着目した形で授業が実施される。当該国のケーススタディをやった後、出身者や勤務経験者がパネルを30分ほど展開する
ビジネススクールのケーススタディでは、その立付自体にステレオタイプなバイアスがあることが多い。日本のケースについても想像通り「日本ではガイジンの居場所が少ない。日本の人たちは臆病で保守的、既存の取引慣行を崩すのは難しいし、会議の席次表もこんなにめんどくさい・・・」といった先入観が過度に根付いているように感じた。 個人レベルの会話にこの影響が落ちてくると、凄く窮屈なものがある。それこそ日本企業を二元論で断罪したり、これくらいは従ったらいいのに、という様式への順応も諦める、といった展開にもなりがち。
何とかそれを和らげたいと思い、ちょっと越権行為ではあったのだけど、戦後の成長経済が生んだ企業観や、キャッチアップ経済における制度的補完性、といったことを簡便に図示したら、想定外のレベルで話がウケた。
これらのネタ、ご存知の方はすぐ分かるが、すべて「池尾先生の日本経済システム論」で学んだこと。短時間にまとめるのは苦行だったが、組織の経済学・比較制度分析発祥の地の学生には浸透度が高いことも実験できて面白かった。 http://agora-web.jp/archives/793423.html
展開が面白くて、都合3コマもパネリストを引き受けてしまった。他のセクションとは年明けまでファイナンス以外の授業が被らない為、いろんな学生に顔を売ることができたのは良かった。


2.ゲスト・スピーカーがたくさん
A)プレゼンの超弩級のプロの講義 アル・ゴアやスティーブ・ジョブスといった、世界で最もプレゼンがうまい人たちのプレゼンの師匠をやっているおばちゃんのお話。 http://www.duarte.com/
スライドのメッセージを絞り、ホワイトスペースを活かす。1時間で教えてもらえることは限定されていたけど、とにかく迫力があった。
興味深かったのは、1969年時点で、米国大統領が行っていたスライド・スピーチとの比較。当時、プレゼンはコミュニケーションのプロ、情報分析を行うアナリスト、スライドを描く技術屋、の3人がセットになって作られていた。これが、現在はパワポ一つで個人ができるようになってしまっている。技術としてはすばらしい一方で、以上の専門性の欠落は常態化。このことを意識しないと、いくら優秀な人でもダメなプレゼンしかできない、といったことを繰り返し述べていた。
また、どうやったら観客の知識水準や、承認欲求に合わせた話し方ができるのか、といったことについて、その片鱗だけでも理解できたことが有意義だった。


B)米国イエズス会プレジデント
GSB卒業生で、イエズス会の米国における各管区のとりまとめを行っている神父様が講演。40代になってGSBの学生となったが、その目的は「慈善活動でもバランスシートを読む必要があるから」だったとのこと。
カトリックの世界でも、留学や院への進学(神学以外のジャンルで)は珍しいことではなく、ビジネススクールへの進学も前向きに評価されているのだそうだ。イエズス会の中にも他に3人のGSB卒業生がいるらしい。
学生からの質問にも、「卒業してからもFaithを保つためにはどうすればよいか」といったまっすぐな問いかけもあり、講師も「ビジネスをするときにも、内なる声をちゃんと聞き、導きを大事にしていれば報われる」というコンテクストの会話になった。 日本ではこういう機会がお葬式とかに限られているのだけど、良く考えたらこっちのカトリックの人たちは毎週日曜にこういうお話を聞いている。ガツガツした若者に囲まれるだけでは薄まっていく感性を少し取り戻せたような気がした。

C)ウェルス・ファーゴ会長

金融危機の中を別格の意思決定で生き抜き、バフェットから事実上のNo.1企業の評価を受けたこともある同行。GSB卒業生の会長の話は、まだ現役ということもあって些かヘッジがかかったものだったけれども、言葉の間から伝わってくる「商業銀行に徹する」という強い信念が面白かった。ワコビアの証券部門の継承を受けて、今後は地味に投資銀行ビジネスも拡大していく、という発言に、真っ先に「それでは今回の金融危機の再来を招くのではないか」と学生が噛み付いたりするあたり、ここは自由だなあ、と感じる。

WFは分権を極端にやっている銀行であり、かつオーガニック・グロースに徹している。M&Aの目的は収益の拡大だけであり、大体のケースでシナジーは信じていない、必ず15%のIRRを求める、といった姿勢には、何だかオーナー社長のような貫禄を感じた。 また、内部の文化をどうやって守るか、という点には強く拘った発言があり、GSBで学んだこともまあまあ有益だったけど、それよりも今後成長する人には「1信じることの学士号、尊敬することの学士号、モチベーションと楽しさの修士号、リーダーシップの博士号」が必要なのでは、と述べていた。

D)ネットワーカー:ハイディー・ローゼン

定期的にホームパーティを開き、恐ろしい数のコンタクト先を持ち、必要に応じてマッチングをし、不適なマッチングは容赦なく切断するベンチャー・ネットワーカー。本人自身が有名なケーススタディになっており、最近はさらに、Skinny Songsという「女性のダイエット向け音楽」をプロデュースしたりしている。





いったいどんな奴なんだ、という感じで見に来る観客多数(自分を含む)。
見た感じは、想像通りというか、「鉄の女」という印象だった。ドラマDamageのグレン・クローズとほぼ重なる印象で何だか顔の一部の表情筋が強張っているけど、話が面白い、というか。 ケーススタディのTakeawayとして、コネを作るときには必ず相手にコミットした行動をしろ、というのがあるのだけど、それを地でやるとともに、仕事は楽しく、儲からないとだめ、というまっすぐな主張をしていて、突破力を感じる。とにかくネットワークを作ったり、マッチングをするのではなく、自分の限界や、やるべき仕事の範囲を常に測ることを強調していた。 毎日のようにお昼の時間にこのようなプレゼンに触れられるのは超がつくお得感。最初のうちは、また外部講師か、と思っていたけど、累積的な経験であることの効果はすごいのではないか、と思えてきた。

3.クリティカルシンキングの授業
教授がサディストで、テーマは「貧困の終焉」:ジェフリーサックスの本、イースタリーの本を読み比べて論点を明らかにし、自分なりのソリューションを出せ、というもの。しかも教授はNPO経営論の授業を担当しており、ゴジラに石を投げるようなテーマ設定。これを事実上2日ですべてやれ、というのだから本当に厳しい課題だった。
討論の場である授業は、教授宅で行われ、豪勢なパロアルトの邸宅で、えらい高そうなステーキを囲むという、貧困を語るにはおよそ不適な環境ではあったが、質の高い議論に、結構アグレッシブに参加することができ、個人的には記念となる授業だった。


バーベキューで焼いた肉の量。これで8人分。電話と比較してもでかすぎる。


4.その他 中間試験の結果は、相当出来が良かったものと、不振なものに綺麗に評価が二極化。初めての試験が終わり、全体的にまあ、これならやっていけるだろうと多くの生徒が踏んだのか、授業への参加度は20%くらい低減しているような気がする。個人的には、無理強いなく、発言したい人が話している感じなので、居心地は結構良くなったような気も。自分のしゃべり能力も、だんだんとリラックスしてでいるようになってきた。最初の2ヶ月としては良い滑り出しであるように感じる。あとは、ちょっと寒くなってきたり、毎晩4時寝になっているので、身体を悪くしないようにしたいところ。

1 comment:

  1. 先日キャンパスビジットさせて頂いた、ALPHAの岩切です。先日はご多忙の中本当にありがとうございました!お陰で素晴らしい経験をすることが出来ました。今後は本ブログを通じてよりStanford GSBについて理解を深めていきたいと思います。引き続き宜しくお願いします!

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