3月下旬のジャパン・トリップに向けての作業が慌しくなってきた。
ミーティング先は、観光をする余裕がないくらいに埋まり、そうそうたる人たちに会えそうなので楽しみな限り。
ただ、それ以前の渡航ビザの手続きで、かなり長い時間を準備や調整に費やしている。
日本への渡航ビザの手配を行うのは初めてだ。
ひょっとすると、こんな簡単な手段があるよ、というのもあるのかもしれないのだが、(少なくとも私にとっては)難易度が高い。
まず、外務省のビザに関するウェブサイトを見てみると、ビザを必要としない国の一覧がわかる。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/index.html
欧州や米国大陸の多くの国がカバーされており、先進国といえる国では、だいたい3ヶ月以内の渡航であればビザが免除されていることが分かる。
ただ、上記は主に先進国の話。中国、ロシア、インド、ブラジルは含まれていない。BRICsは、今後の経済成長の主役ではあるのだが、こういった国は入っていない(*1)。
ビジネススクールには、BRICsの学生も多く(学校が意識的に多くしている面もある)、前述のとおり我々のトリップ参加者にも何名か、ビザが必要な学生がいる。その中でも米国のグリーンカードを持っていない学生への要求は、結構大変なものだ。グリーンカードを有さないロシア人の学生の場合、パスポートのほかに求められる資料として、以下、がある;
- 日本での受け入れ人が記入する保証書・招聘書
- 招聘人の所属する企業の登記謄本もしくは(上場企業なら)四季報のコピー等。個人の場合は、納税証明書
- 「日本語」で書かれた旅程表
- 過去3ヶ月の銀行預金残高を示す書類
- 修学旅行を学校が主催していることを示すレター(訪問先や保証人情報込み)
- 米国の入国関連書類(ビザ、I-94、I-20)
- 申請用紙を二通
- 写真二葉
受け入れ人にも、何らの招聘を行う理由が必要で、赤の他人、というわけにはいかない。日本語で書かれた旅程表も、必要な人数分を作っていて思うのだが、日本側の協力者にも割と負担がかかる作業になる。
平たく言うと、日本に縁もゆかりもないけど、関心がある成長市場の人たちが、気安く日本には来れないのだ。国境を越えること、の意味が単純にビジネスや観光という枠組みで割り切れないことは重々承知だが、たとえば
- ふらっと観光で来て貰って、日本を好きになってもらう
- 投資家として招いて、方向感を持ってもらった上で、日本の資産を買ってもらったりとか、工場を見てもらった上で新興国市場での提携を打診してもらう
20年ほど前、家族旅行でフランスからスイスへ向かうバスに乗ったことがあった。途中、国境に差し掛かると、バスの中に検査官が乗り込んできて、前方の座席から、入念に一人ひとりのパスポートのチェックが行われていった。検札という感じではなく、かなりじっくりと、声を荒げながら検査が進む。その間、約15分ほど。
そして、最後部の座席に座っていた我々が4冊のパスポートを差し出した瞬間、検査官の表情が柔和なものへと変わる。ああ、日本人は別にいいよ、Welcome to Switzerlandと中身も確認せず、彼はバスの入り口の方へと引き返していった。
ロシア人の友人と話しつつ、こんな経験が脳裏を過ぎる。一連の手続きをしながら、彼らに「面倒な手続きが多くてごめんね」と伝えると、『いや、もう慣れっこですよ。僕がロシア人に生まれた責任みたいなもんだから(笑)』と言われた。自分は、生まれながらにして、世界で一番くらいに恵まれたパスポートを持てる立場。頭では分かっているけど、現実に接しないと感じ得ないことだ。
蛇足的にだが、
日本に、観光立国・投資立国の側面を増やすとするならば、こういった手間隙をかけてでも、来たい、見たい、感じてみたい、と思われるだけのソフトパワーをアピールすることが必要だ。個人的に、これは実力の問題というよりも、広報や見せ方の問題なのだと思っているし、もうちょっとうまくやる方法はあるよね、という気もしている。インドなんか、これだけ見て行くこと決めたら、だいぶ痛い目遭うよ、という位にかっこいいCM流しているんだし。日本も外国人の映画監督とか作って、超ナショナリスティックな観光映像とか作ってみればいいのにな。Yokosoキャンペーンは、ちょっと伝統系に寄り過ぎている気がする。
(*1)
日本語のページと
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/index.html
英文のページのフォーマットが違うのが少し気になったり(中国のボタンがない)、
http://www.mofa.go.jp/j_info/visit/visa/index.html
必要な書類も、ケースバイケースなので、海外の領事館に電話して問い合わせることが必須だったりと、逆の立場で考えたら、中々大変なのです。
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