2010/01/24

(Offネタ)アバターを観てきた

ちょっと番外的だが、週末に今更ながら観てきたアバターの感想を。

元々、夫婦で映画が好きだ。年に60本くらい見た年もあったくらい。個人的な好みは、SFの中でも、ゼメキスのBack to the FutureやContact、ベッソンのFifth Elementみたいた、監督の個性と、分かりやすい設定が出てくる作品。キャメロンの作品では、アビスが好きで何度も観ていた。最近では、Timetraveller's Wife(きみがぼくを見つけた日、SFというには厳しいかもしれないけど)が良かった。こういう映画を見ると、観た後にその世界観を引きずる感じが心地良い。

ただ、こっちにきてからは字幕もないし、何より時間もないので、だいぶ映画はご無沙汰になっていた。そんな中、友人と会食したりfacebookでの発言を観たりしているうちに、何だか周囲はアバターを見ないやつはどうかしてる、みたいな雰囲気になっていることに気付く。取り残されてはいけないと思い、噂の3D対応シアターで観てきた。

以下はネタバレを含みますが、まだの人は見る時間を作るべき、とだけ書いておきます。




結論から言うとこの映画、現存する技術や発想の取り合わせで、SF映画作品の最長不到距離まで飛んだような印象だった。3Dの使い道もそうだけど、仮想現実(いや、リアルか)と、種族の分断と、ハリウッド的なドンパチを、これでもかというくらいに効率的に詰め込んでいて、これで売れなかったらSF映画はあかん、というパッケージになっていると思った。何より、キャメロンの鬼のような執念を感じ、この映画を撮るために全てをやってきたのでは、と思わさせられた。過去の自分の作品からの引用と、SF分野の作品、宮崎アニメと、きっと気づかなかった多数の映画へのオマージュに溢れていて、自らの世界観というのはこういった要素により形成されて、育てられたんだ、という気迫が伝わってくる。

話の内容は既に存分に紹介されているので触れないが、この映画の主題には、二つの軸があると感じた。一つは宮崎アニメに頻出する「世界の調和」で、もう一つは米国人が奥底で感じているのかもしれない開拓精神の疚しさなのだと思う。

前者の中でも、ナビ族の触手の用いられ方には、色んなメッセージを感じた。触手を使って、他の生物を直接コントロールできるわけでもなく、またいくら親しくなっても踏み込めない領域があることを自然に描き出している。そして、大きな植物がクラウドみたいな役割を果たしていて、そこを介在して二つの世界の間の往来が行われるという、子どものような発想力。マトリックスでは頭に電気プラグという、何とも痛々しいプロセスでその伝送が行われていたのに対して、アバターでは同じ行為がもうちょっと自然な、ナウシカの王蟲の触手のような生々しさに包まれている。あくまで、世界の調和には人類の良心が必要!みたいな、何だかストイックなテーマを練りこんでいて、なんだか一つの基本にやけに忠実だと感じた。

後者の開拓精神の疚しさは、あまりに前面に出されていることが衝撃的だった。もう一種のSFのジャンルとして確立されている(1)「退廃した地球」、の延長線で、(2)「相変わらず人間が宇宙を汚している(しかも株主至上主義により)」というのが重なっているのは、(1)金融危機後の安易な資本主義批判、と(2)温暖化問題、という二つの「超ベタ」な時代テーマに乗っかるという、何だか映画を売り込むためのなりふり構わない設定が取られている気になる。アビスの中でも、こういった割と説教くさいテーマは出て来たのだけど、当時、キャメロンはそれを控えめに出して、あんまり重くしすぎないことに成功していた。。さらに言うなら、スターウォーズも政治システムをそれとなく批判するくらいだったので想定観客の間でメッセージが生き残ったのだと思う。基本的に情報の受け取り手が十分思索して、こういうことなんだろう、とメッセージを類推するプロセスも、SFでは大事だから。
しかし、アバターでは情け容赦ない設定が取られていて、現地法人の社長(と言うべきか、、、)が困惑する表情を浮かべていたり、更に株主至上主義経営に乗っかった「戦争をやめられない軍曹」が映画のラスボスとして君臨しているあたりに、マイケルムーアと同じ意固地さを感じてしまった。より大きな人口に向けて、分かりやす過ぎるメッセージを打つという、ちょっと大き過ぎる賭けに出たような気がしている。
この強気なポジショニングと同時に、更にナビ族が「ほとんどインディアン」であることが、更にその印象を強いものとしている。他のブログで、Last of Mohicansに近いような主題だ、という指摘があったけれど、まさにその通りだと感じている。これらのコンボで考えると、キャメロンは政治的な意思ありありでこの作品を作っていたんだなあ、とSFへの愛との兼ね合いで考えると微妙な気分にもなったりする。

この映画、同級生の中での反応を見てると(1)とにかく映像や3Dや出てくる機材がクール、ストーリーも申し分なし、(2)中に出てくるデバイスや乗り物は面白かったけど、ストーリーは結構微妙、という感じに二分されている。個人的には結構(1)のほうで、やっぱりラスボス討伐後のご対面シーンとかはぐっと来るものがあった。(2)の反応の人たちは、秋学期のクリティカルシンキングの授業が良い特訓になったのかもしれない(笑)

ちなみに、続編も構想中なのだと。正直、予測市場があるなら二作目は絶対コケる方に掛けたい。既に出すべきメッセージネタの在庫は尽きてしまったように思えるし。ただ、T2という偉業をやった監督だけにそこは是非成功して欲しい、という応援もしたいところ。

最後に3D技術について。今までもUSJのスパイダーマンライドとかで経験してたけど、昔からあったこの技術に、ちゃんと脅かす以外の位置付けを与えたことは大きいと感じる。予告編でみた不思議の国のアリス(またもバートン×デップという悪夢バージョン、笑)とか、映画館を廃れさせない道はまだまだあるのだな、と感じた。




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