2010/06/09

一年目が終わって

一年目が終わった。

激動といえば激動だったし、あっけないといえばあっけない、という感じだったが、とにかく一年乗り切った、という感傷はある。

新しいことを何か覚えたか、といえば、正直なところ、「物事の考え方」というレベルでは頭をハンマーで殴られるような経験はそれほどはなかった。基本的に、学部時代に積み重ねた物事の見方、というのは変わらないし、もっと長く言えば、高校の頃から持っていた世界観は、さほど変わっていない気がしている。

しかし、マジになる、という点ではこれ以上ないくらいにショックを受け続けた9ヶ月だった。自分が日本企業のサラリーマンである、ということが、いかに色々なことを知ることができない/知らずに済む、という立場だったことかは、毎日、学校に行くたびに感じさせられた。生きることの機会コストは非常に大きく、世の中はその問題から目を背けさせる装置で溢れている。この問題に、最初から正面切って立ち向かっている同級生もいれば、自分は自分と割り切ってキャリアを決めている人、どちらのバランスも保とうとしている人等、スタンスの面でもDiversityが見られている。そのこと自体が貴重だ。自分はどのタイプになりたいのか、自分は運命をどんなルールで縛りたいのか、本当に悩んだ。まだ答えは出そうにないけれど、少なくともベンチマークとフレームワークを得ることはできたと思う。来年度は、その実験の年である。



さて、顧客満足度的なGSBの評価をここでしておきたい。Leadership Labsのスタイル同じく、必ず長所と改善点を述べる形で。

プラス(良かった点)
世界のリーダーといえる若者を集めている点、これに尽きる。日本でキャリア・ゴールとして思いつくようなことを、易々と達成してしまう人が溢れている。勿論、スーパースターばかりではなく、様々な学生がいるけれど、たった9ヶ月のInteractionを通じて、殆どの人が変わる過程、というのを見ることができた。世界を変えるために、どうやって自分が変わるのか。この、避けられない問いを考える心理的コストをGSBは徹底的に下げてくれる場所である。
・学生中心の授業スタイル:3年前のカリキュラム変更以来、GSBは大分アカデミック中心になった、との批判がある。その側面はあるかもしれないものの、多くの授業において本当に良かったと思えるのは、時として教授よりも経験・発想で勝る学生が遠慮なく意見を述べられる、というスタイルである。これはある程度、どのMBAプログラムでも行われているものだが、成績非開示ルールの下、自分のレピュテーションを下げてまで点を取ろうとする傾向は少ないので、学生集団を感心させてやろう、と選りすぐりのネタを発言で出すインセンティブが生まれやすいのだと思う。一年間、多めに応用コースを、些か無理しつつも取ったことで、そういうやる気のある学生が多いクラスを最大限経験できたことは非常に良かった。
ソフトスキルの習熟こそ、自分のGSB体験の中心にあることを実感している。Leadership Labsに加えて、冬学期・春学期とコーチングを2年生に受けたこと、チームワークにおける対立、対人関係におけるアクションの大切さ等、このリスクフリーの環境だからこそ学べたことは本当に大きい。自己理解ができていると思っている人ほど、それは出来ていない、という問いを考え続けた9ヶ月だった。2年生の優先履修科目も、Touchy Feelyやコーチング等、他人に対して、どうやったら善きリーダーとなれるかについて、徹底的に自分を試す予定である。
・GSBというよりも、シリコンバレーという立地ゆえのことではあるが、年が明けた頃から、他学部・学外の日本人の方と多く知り合うように努めてきた。ここは、日本の経済システムに対する、一つの強烈なアンチテーゼを提示し続ける場所であり、ある意味外国人以上に日本を強烈に批判しつつも、心の隅で拠り所として考える人に溢れている。ロンドンで小学校時代を過ごした自分も、多少ならずともそういった心を持っていたと考えていたが、精神論ではなく、実際に何を変える必要があるのか、犠牲となるものは何か、本気で考え続ける精神的な土壌となっている。スタンフォード日本人会で共同で代表を務めることもあり、向こう一年間、この機会を大切にして、考えていきたい。

デルタ(改善点)
若くて独身中心の文化であり、遊びすぎる傾向はあるのかもしれない。既婚者同士での付き合いはかなり増えたけれど、一部の独身者グループは完全にParty School状態。まあ、インセンティブ理論のいい勉強になっている気がするけれど、Distractingだとも感じる。こればかりはしょうがないか。
学生が優秀すぎて、勉強をナメていることも多い。ランダムで与えられた質問に対する思考能力や、受け答えの上手さ、という点では優秀な部類の学生の頭脳は、教授のそれを上回っていることがしばしばある。教授自身にとって、それは本当に恐ろしいことなのかもしれないが、そこを容赦なく「こっちは学費払ってるんだ」という立場で追い詰める学生の多いこと多いこと。学生の傾向として、やはり難しい理論を読むよりも、分かりやすく新しい実例を求める傾向があるので、理論好きとしては、これまたDistractされることがしばしば。悔しいが、HBSのクリステンセン教授といった、この分野ならこの人、という教授が多いわけではないことは、シリコンバレーという環境の代償ともいえるのかもしれない。ウィリアム・シャープや、ポール・ミルグロムも、近くにいるだけで、教えてはいないし。
・(GSBというよりは自分への評価だが)時間管理といった面では、ほとんど失敗続きの一年だった。3時間で終わると思った課題は8時間かかる、ということを身に染みて感じた。MBAの1年生というのは大抵そういうものだ、といわれるけれど、その通りになってしまった。来期は、できるだけ2時以降に寝る日を減らしたい。


とはいえ、完全に皆様のお陰で何とかここまで来れました。
本当に、ありがとうございました。

更新頻度も大分落ちた形で恐縮ですが、秋以降もまた、よろしくお願いします。

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